『影踏み』さんの小説
□君の恋について聞いてみたい(中編2)
1ページ/1ページ
━ガラガラッ…
「ただいま〜。」
もうすっかり日も落ちた頃、
私はやっと家路についた。
着替えようと部屋に向かう途中、
夕飯のおかずを居間に運ぶ、
かすみお姉ちゃんに呼び止められた。
「おかえりなさい、あかねちゃん。
もうみんなお夕食はじめてるから、
あかねちゃんも着替えて降りて来てね。」
「は〜い。」
私は、部屋着に着替え、
夕食をとるべく、居間に降りて行った。
そこには、いつも通りの食事風景があった。
…只1人を除いては…。
背後からでもわかる。
完全に不機嫌な乱馬の姿があった。
「…何怒ってんのよ?」
「…別に怒ってねーよ。」
あからさまに怒っている。
恐らく、私とムースのコトを気にしてるんだろう。
「こんな時間まで、ムースと何やってたんだ?」
嫌味ったらしく聞いてきた。
ほ〜らやっぱり!!
「気になるの?」
「気にならねーよっ!!!」
ご馳走様!と、機嫌悪そうに、
乱馬は居間を後にした。
こんな状況を、うちの家族が見逃すはずも無く、
我が家のゴシップ女王”なびき”お姉ちゃんが、
目を輝かせ身を乗り出しツッコんできた。
「ナニナニ、あかね?!
あんたムースと何かあったわけ?!」
「…別に、何もないわよ。ご馳走様!」
家族の好奇心が、私一点に集中し始め、
いたたまれなくなってきた私は、
お味噌汁を飲み干し、居間を後にした。
━翌朝。
私たちは、気まずさを抱えながら、
学校へと向かった。
1限目━。
2限目━。
3限目━。
昨日のムースとの計画が、
頭の中を占めていて、
授業に集中出来ない。
昨日のコトが気になるのか、
さっきから乱馬も、
こちらをチラチラと伺っている。
…そろそろなんだけどなぁ〜…
━シュッ!! カンッ!!━
なんとも中国っ!といった感じの
飾りの付いた短剣が、手紙らしきモノと共に、
私の机に勢いよく刺さった。
こちらをチラチラ伺ってた乱馬は、
すぐさま私の机にやって来て、
机に刺さった短剣を抜き取り、
手紙を広げて読み上げた。
「…なになに、
『天道あかねへ。
勝負を申し出る。
本日放課後、
○丁目の空き地へ来られたし。
ムース。』
…何だこりゃ?!
ムースの野郎、何考えてやがる!!」
乱馬は、読み終えると、
手紙をクシャクシャにして、握りしめた。
━乱馬、残念ながら、
それを考えたのは、私よ。━
乱馬は振り返ると、
私に詰め寄ってきた。
「あかね!おめぇ、まさか行くつもりじゃないだろうな?!」
「行くわよ!
天道道場の名にかけて、
挑まれた勝負は、きっちり受けるわ!」
「何考えてんだおめぇーは?!
おまえみたいなニブイ女が、
ムースに勝てるワケねーだろ?!!」
ぎゃぁぎゃぁと喚く乱馬をよそに、
私は、心の中で、舌を出して笑っていた。
━さぁ、一世一代の賭けの始まりよ!!
━君の恋について聞いてみたい(中編2)fin