『影踏み』さんの小説

□私は子供(前編)
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あの人は、


私を”まだ子供”だと言った。




まだ子供。



ほんの子供。



ただの子供。




あの人にとって、



私は、





子供。







私は16歳。



そう…あの人とは10以上も歳が離れてる。



そんな、あの人からすれば、


私なんて、やっぱり子供同然なんだろう…。



でも、



私は16歳。



カラダはすっかり大人になった。



生理だって来るし、



妊娠だって出来る。




当然、セックスだって。





それでも、私を見つめる貴方の瞳は、


幼いあの日の私を見る瞳と、


何一つ変わらない。





私の、芽生え始めたばかりの、


”女”としての自尊心を、


いたく傷つけられた。



もし、裸でせまったら、


あの人は、私を、


”女”と認識してくれるのだろうか?



私のカラダに、男として、


欲情してくれるのだろうか?




私を抱いて…くれるだろうか?





そんな思いを巡らせていた私の耳に、


小さくノック音が聞こえて来た。




━コンコンッ━




「あかね、宿題見せてくれねぇか?」




乱馬だ。



あぁ、そうだ。


私は今、自分の部屋で、


宿題をやっていたんだ。



いつの間にか、


思考が何処かに飛んでたみたい。



悶々とした気持ちを晴らそうと、


私は、一つ返事で乱馬の頼みを呑んだ。




乱馬に宿題を写させてる間、


私は、ベッドに腰掛け、


机に噛り付いて宿題を写す、


乱馬の後姿を眺めながら、


あるコトを考えていた。




この男、


普段ひとのコト、


”可愛くない”だの


”色気がねぇ”だの言うけど、


私が裸で迫ったら、


いったいどうするのだろう…?




「…乱馬。」




あぁ?と気の無い返事をしながら


振り向いた乱馬の顔は、


一瞬で硬直した。




そこには、


一糸纏わぬ姿の私がいたのだから。









━私は子供(前編)fin

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