『影踏み』さんの小説

□好きだから
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あかねと喧嘩した。




どうしてオレたちは、いつもこうなんだ…。


他愛の無いことですぐ突っかかり合う。



どちらからともなく喧嘩が始まる。



怒らせたいワケじゃないのに…。





うまくいかない。







いつものように、あかねと口喧嘩になり、


思いっきり吹っ飛ばされたオレは、


結構、遠くまで来てしまっていた。



ご丁寧に水をぶっ掛けてから吹っ飛ばしてくれたおかげで、


普段よりも数段低い景色を眺める羽目になった。




「ったく、乱暴な女だぜ…。」




悪態を呟いても、何だか虚しい。




何だか、すぐに天道家に向かう気になれないオレは、


すぐ近くに架かっていた橋の手すりに腰掛けた。



そこから見える景色は、


宝石を散りばめたようにキラキラと輝いていて、


男のオレから見てもキレイだった━今は、女だが。




「…あかねにも、見せてやりてぇな…。」




ボソッと口に出していた事に気づき、


独りで真っ赤になってしまった。



そもそも、オレたちの関係って、


いったい何なのだろう…。



友達━って感じでもないし、


家族━っていうには距離を感じる。



だからといって、


他人━って程寂しい間柄でもないし。




恋人…?




なワケがない。




…あかねは、オレの事、どう思ってるんだろう…




最初に会った時は、あからさまに嫌われてたけど、


段々打ち解けて、今じゃ結構イイ感じだと思ってたんだが…。




そう思ってるのは、オレだけなんだろうか…?




出会った頃のあかねは、


東風先生のことが好きで━。



東風先生が、かすみさんのこと好きなの知ってて、


それでも好きで…



でも、オレが現れて、無理やり許婚にされて…




…………




あいつ、”関係ないよ、もう。”とか言ってたけど、


本当はまだ━━?!





脳裏に、昔見た光景が蘇る。



接骨院で、先生の胸で泣きじゃくるあかねの姿…




思い出したくないっ━!!



思いっきり頭を左右に振り、


映像を追い出す。




「…はぁ…。なにやってんだ、オレ…。」




ガックリと肩を落とし、ため息をつく。




喧嘩なんてしてる場合じゃねぇ〜ぜ…。



あかねにとって、オレなんて、


本気で親が決めたダケの、


ただの許婚なのかも知れないじゃねぇ〜か。



シャンプーやうっちゃんに対するヤキモチだって、


オレが勝手にそう思ってるだけで、本当は、


将来ご近所で、



”天道さんところのご主人、


 女癖がかなり悪いみたいよぉ〜!やぁね!”



なんて噂されるのが嫌なダケとか…?!



オレのことが好きとかじゃなくて、


世間体だったり………?!




…………





…あかねの人生において、


  …オレって邪魔な存在なのかなぁ…





思えば、オレと関わってからのあかねの生活って、


トラブルに巻き込まれてばっかりだよな…。


きっと。



オレがいなくなれば、


穏やかな人生がおくれるんじゃねぇか…?




あかねのためになるなら━━。





でも、待てよ。



オレ自身はどうなんだよ?




あかねのいない人生。


また親父と2人きりの修行の人生。




━━嫌だっ!!!




修行の人生はいいとして、


今更あかねがいない人生なんて…!!



考えらんねぇ!!



今のオレが、あかねにとって、


たとえ邪魔だろうがなんだろうが、


オレにはあかねが必要なんだっ!!



これから、あかねに必要な存在になればいいんじゃねぇか!!





待ってろよ、あかね!!



オマエにとって、なくてはならない存在になってやるぜ!!





オレは、さっきまでのヘコミが嘘のように立ち直り、


天道家へと帰路を急いだ。



今度この夜景を見る時は、


絶対にあかねと一緒だと、


心に誓いながら━━。






━fin

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