短編 

□HAPPY BIRTHDAY沖田
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わたしが沖田に恋をしているかと聞かれれば答えはイエスだと即答するけれど、恋人にしたいかと聞かれれば答えはノーだからやっかいなんだ。


「何で好きなのに付き合いたくないの?」

友達は聞く。そりゃそうだ。わたしは彼が好きなんだもの。しかし付き合いたくないものはしょうがない。
わたしはいつも苦笑いで答えるのだ。


「本当の恋じゃないから」


そう、わたしは本当の恋というものを体験したことがないのだ。
まだまだ若いんだもの。本当の恋というものをしたことがなくたっておかしくはないだろう。
憧れは、あるけれど。
わたしの中にある『本当の恋』とは他人には理解されにくい問題かもしれない。
沖田のことは好きだ。
もし彼に彼女が出来たらわたしは素直にショックを受けるし、嫉妬というものをするかもしれない。
時々無性に触りたくなるし、抱き着きたくだってなる。
けれど友達というこの関係が居心地良くて、これ以上を望めなくて、むしろこの関係こそが幸せで。
もしわたしが彼と付き合ってしまったら、この居心地が良い距離感では居られなくなる。近すぎる彼のことを好きじゃ居られなくなる。

「良く分からない」

他人は言う。
良く分からなくて当然だ。わたしの論理で、わたしの中で自己完結している問題なのだから。
時たま、とても仲が良さそうに笑い合ってる恋人を見ると、羨ましく思う。
近すぎる関係に居ても尚、二人は幸せでいれるのかと。
羨ましく思う。




「沖田ァ、あんたは本当、いい奴だよ」

「んあ?」

「だから、素敵な友達だなぁってこと」

「当たり前でィ。もっと崇めろ」

「はは、うるせ、」


彼が漕ぐ自転車の後ろに乗る。風を浴びる。夏の青空を見上げる。白い制服を靡かせる。あーあ、


「そういえば誕生日が近いじゃん」

「おー、」

「近藤くんや土方や山崎も呼んでさ、皆でパーティーしようよ。鍋とか」

「夏に鍋なんて俺は御免でィ。てめーでやんな」

「じゃ、土方にやらせよう」


こんな距離感が好き。近いけど、近すぎない。
決して甘くはない。こんな距離。





「……沖田、好きだよ」




いつか、沖田の隣にいるのが誰か別の人だとしても、再び会えた時に『久しぶり!』と笑い合えるような仲でいたい。
おばあちゃんとおじいちゃんになっても、『昔は馬鹿やったね』と昔話や世間話で笑い合えるような仲でいたい。
つかず、離れず、今のように適度な距離で歩ける仲でいたい。




「友達として、ね」

「はいはい、知ってらァ」




なんて、我が儘かしら。
HAPPY BIRTHDAY OKITA SOUGO









あ、甘くなくてすみません…(>_<)
 

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