捧げ物

□『白の救い手』
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鮮やかな電飾が町を埋め、薄暗い中我が物顔で煌めく。その瞬きは、寒風に吹きつけられて自然と潤んだ目に突き刺さるかの如く。
ぼんやりとした日常の中に散在する、数少ない幻想風景。

その無意味な幸福感に包まれて家路を歩む人々の波。それに飲まれ、多少翻弄されながらも進む彼、高橋諭もある意味そのうちの一人だった。
不機嫌そうに顔をしかめて歩く彼の格好は、学校の制服の上にコートを羽織っただけ、そしてその左手には巨大なビニール袋。袋の四隅が不自然に出っ張っていることから、中身が何か四角い箱状のものだということは容易に推測できた。

「あ゛ー……」

思わず漏れ出す、溜め息にも似た声。
その日は終業式だったので、帰りは早かった。左手に堂々とぶら下がっている袋は……そこまでの重量はない。中身が可哀相なことにならないように、一応注意して運ぶだけ。一番重いのは、彼の心中、というか彼の気分だった。

「何で俺が……」

ぶちぶちと愚痴りながら、諭は寒風に身を縮めた。能天気なむかつく笑顔×二と、食い意地はった仏頂面を忌々しげに回想しながら。


始まりは、真人の一言だった。
諭と要は学校帰り、そのままゲーム目当てで(要は菓子目当てで)真人の家へ直行していた。そこで、たまたま在宅していた真人の兄である正信も加えた四人で格闘ゲームをしていたのだが。

「そういや今日、クリスマスじゃん!」

コントローラー片手に真人が叫ぶ。それとほぼ同時に諭の操作キャラが必殺技を発動。隙まみれだった真人のキャラに次々と怒濤の如き攻撃が叩き込まれた。

「そういえば、そうだったなー」
「いやあぁぁ! 何すんだてめっ! 鬼ぃ!」

さらりと言った諭は、さらにコンボを決めていく。その連続攻撃に画面右上に、表示されていた薄緑のバーはみるみる減り――
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