公安第二課(裏リク)

□BPM
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「秋葉さん、目を閉じてみてくれます?」
ベッドにもたれて床に座って雑誌を見ていると。
不意に何の前触れもなく梶原にそう言われて、秋葉は眉をひそめた。
「あ、警戒してる」
「当たり前だ」
どうせロクなことにはならない予感がする。そしてその秋葉の予感は、9割ほどの高確率で的中するのだ。
「えー、今日はキスなんてしませんから!!」
無邪気に笑う梶原は、今日も秋葉の部屋にいる。
「今日も明日も明後日も、お前のキスなんていらない」
「……ひどっ……じゃ、なくて」
一瞬落ち込んで見せて、梶原はすぐに立ち直る。
この彼のまっすぐさが怖くて怖くて仕方が無い。
気がついた時には、するりと自分の懐深くまで入り込まれている。
(実際うちにも入り込んでるし…)
そう思い、秋葉は少し考え込んだ。
何故彼は、こんなに自分に深入りしてくるのだろうか。
好きだから、と言われても。そんな感情はよく分からない。
「目、閉じてくださいよ。俺を信じて」
「信じられるか」
「……ひどっ……じゃ、な・く・て!!実験です実験!!」
「……何の」
お前はガキか、と言いかけた言葉はさすがに飲み込んだ。
「目を閉じて、床に右手置いて、人差し指でトントンって床を打ってみてくださいよ。30秒でいいから」
「……?」
「信じられないなら、騙されたと思って」
「……騙されたくもない…」
と、言いながらも。
こうなったら頑として引かない梶原の性格を知っているだけに、面倒なことは早く終わらせてしまおうと、秋葉は言われた通りにした。
「自分の好きなペースでいいですから」
「ふーん」
パソコンのキーを打つくらいの力で、秋葉は指先で軽く床を打った。
梶原は、腕時計の秒針を見ながらその音を聞いている。
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