公安第二課(裏リク)

□breath
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どうしたいか、なんて。
聞かれても分からないから。
こうしてあなたが呼吸する音を
ずっと聞いている。



「お前は…俺の何?」
自分が抱きしめているのか、抱きしめられているのか判断がつかない微妙なところで。
秋葉に問われた。
ベッドの上で眠っていた彼が、いつものように床で毛布にくるまっていた梶原の側に降りてきたのは真夜中の事だ。
また悪い夢を見たのだろうかと思い、何も言わない秋葉と一緒に毛布にくるまり、梶原は彼を抱きしめていた。
自分の背中にまわされた秋葉の手の、その冷たさがTシャツごしに肌に伝わってくる。
「……え?」
横を向いていた身体を、仰向けに戻される。
「秋葉さん?」
名前を呼んだところで、唇を塞がれた。
だがそれはほんの数秒で。
秋葉は梶原の肩口にもたれかかる。
「どうしたんですか」
「お前は、俺をどうするつもりなんだ」
どことなく悲しい表情で、秋葉は梶原の頬を指先で撫でた。
「勝手に俺の心の中に入ってきて……好きなだけ踏み荒らしたら、いなくなるのか?」
「秋葉さん。また怖がってる?」
「……怖くねえよ」
また、失うことに怯えている。
これ以上、心を許していいのかどうか、まだ迷っている。
「試しても、いいですよ。俺が秋葉さんを裏切るかどうか」
柔らかく笑んで、梶原は秋葉を引き寄せた。
「もう一回、キスして下さい」
その冷たい唇で。
「そしたら、分かりますよ。それに…秋葉さんが俺を置いていなくなっちゃう可能性のほうが、高い気がしますけど?……俺を置いて行かないって約束できます?」
「……できないな」
「でしょ?だから、お互い様じゃないですか……ってことでどうですか」
何がお互い様なのか、よく分からないが。
無邪気な梶原の言葉に、秋葉は僅かに微笑んだ。
「俺は、秋葉さんが…好きですよ?」
この心の中を、目に見える形にして見せられればいいのに、と梶原は思う。
「秋葉さんだって、俺が好きでしょ?」
「何、その自信」
「だって、ほら……」
互いの唇を重ねて、互いの息遣いを聞いてみる。
「こんなに俺の側にいろって、言ってるじゃないですか………」
心をごまかす言葉を口にしなければ、キスだけで饒舌に語ってくるその唇は。

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