機動捜査隊(頂きもの)

□染み
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疲れの癒えぬ眠りから目覚めれば、隣に眠る梶原の穏やかな吐息が、秋葉の耳に届いた。
半身を起こした秋葉は、梶原の顔を見下ろす。
そっと、意識せず腕が動いた。
眠る梶原の、喉元の窪みに両の親指を併せ、押す。
彼の気道の形が指に伝わる。
徐々に力を加えていくと、梶原の眉根が苦し気に寄せられた。
だが。抵抗はない。
眠りから覚めているはずなのに、目を開くことすら、梶原はしなかった。
呼吸が浅く途切れがちになり、只、秋葉の指が押さえつけた喉の肉だけが、ひくひくと蠢く。
「……っ」
酸素を求めて、唇が小さく開いた。
秋葉は、梶原の首を締めていた指の力を抜いた。
……何をしているのか、自分は。
「ぐ、ごほっ!っかはっ!」
取り戻した気道の自由に、流れ入る酸素に。
咳込んで後、梶原が初めて秋葉を見た。
「……なんで、抵抗しないんだよ…」
「俺は……貴方のものだから」
赤い喉元の跡を晒したまま、梶原が言う。
梶原の澄んだ瞳に自分の姿が映っていた。
…泣き出しそうな顔をした自分が。
「…なんで、お前はいつも…」
腕をあげ、梶原は何も言わず、秋葉を抱き締めた。
秋葉を抱いた胸元にぽつりと一粒、雫が落ちて。
梶原のシャツに小さな染みを作った。

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