機動捜査隊(頂きもの)

□生きる理由を見いだす
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「生きる理由を見いだす」

目まぐるしい現場では、飯抜き、昼食なのか夜食なのかわからない時間に食事を摂るなんて日常茶飯事だ。
そんな毎日に、秋葉の食事摂取量を気にもとめていなかった梶原が、秋葉の場合は食が細いという以前に食事そのものに興味を持っていないと気づいたのはプライベートを一緒に過ごすようになってからのことだ。

暑さが増すにつれ、ますます食べなくなる秋葉に食育について口を酸っぱくもの申しても、彼が言うことをきくはずもなく。

「不安なんです。俺」
秋葉の少し痩せた肩口に顔を埋め、ベッドの中で梶尾が呟く。
その身体の重みを心地よく感じながら秋葉が問い返した。
「何が?」
「秋葉さんが食わないから」
「何だそれ?」
髪の毛を撫でていた秋葉がくすりと笑う。
「笑わないで」
顔を覗き込んできた真剣な表情に思わず秋葉も笑みを引っ込めた。
「食べることに興味がない人は…生きることにも興味がないんだと思うんですよ」
梶原の言葉に一瞬目を瞬かせた秋葉が、見惚れるほどの優しい笑みを浮かべ、当たっているかもな、と素直に肯定する。
「…やめてください」
「冗談だよ」
「冗談に聞こえません」
泣きそうな表情の梶原を引き寄せそのまま身体を入れ替えて上にきた秋葉が首筋に口唇を這わせようとしたが、
「誤魔化さないで」
と腕で払われた。そのまま右腕で顔を隠す梶原に、さすがの秋葉も悪かったと思ったのか、
「ごめん」
とその腕ににキスを落とす。
「明日の卵焼き、甘くして?」
「…納豆は?」
「ネギ入れて」
「味噌汁の具は?」
「…椎茸入れて」
「じゃあ椎茸と大根」
「うん」
ようやく梶原が微笑った。
「手のかかるヤツ」
「秋葉さんには言われたくないです」
今度こそ深い口付けを交わした二人の吐息が混じり合い、熱くなる。


自分の背中に回された梶原の腕に、快楽のためだけではない力が込められたのを感じながら秋葉は思う。

髪を撫でていく秋葉の指にいつもとは違う優しさを感じながら梶原もまた思う。


君の横にいることに生きる理由を見いだすことができれば、と。

僕の横にいることに生きる理由を見いだしてくれたら、と。

0080816

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