機動捜査隊(頂きもの)

□プレゼント&プレゼント返し
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「ただいま。秋葉さん、これあげる」
出先から戻った梶原は、小さな紙袋を床にぺたりと座る秋葉へ差し出した。
「…?…何?」
秋葉は紙袋を受け取ると、中身を手のひらにあける。
「…お前、革アクセ好きなの?」
秋葉の手のひらに乗せられたのは、黒革のチョーカーだった。
中性的なデザインで、シルバーの小さなクロスと華奢なチェーンの飾りが中央に付いている。
この前、梶原が同じ様に秋葉に寄越したのはリストベルトだった。黒革の。
「特に好きって訳じゃないですけど、つい…」
苦笑して梶原は答えた。本当は秋葉に似合いそうだと思い購入した、プレゼント、なのだ。
「自分ですれば?…人にあげてないで」
心底不思議そうな顔をして、秋葉は言う。
なんでこの人、こういう時だけ、鈍いのか…梶原にはそれが不思議でならない。
普段は、とても鋭いのに。
「俺にはちょっと雰囲気合わないっていうか…秋葉さんの方が絶対似合うと思うんで」
「…ふ〜ん…じゃあ、貰う。ありがとう」
そこまで言っても、秋葉は全く気付かないのか、素っ気ない。
「ね、つけてみて下さいよ、秋葉さん」
内心の嘆息を隠し、梶原は提案してみた。
前回プレゼントしたリストベルトは、まだ秋葉が着けているところを見たことがなかった。
「…う…」
前にも貰っているのに、使用することなく大切に引き出しの中に仕舞いこんでいる罪悪感も手伝って、秋葉は言葉を詰まらせた。
が、渋々頷く。
のたのたとチョーカーのベルトを外していると、梶原が秋葉の手から取り上げた。
「つけてあげる、秋葉さん」
最上級の笑顔で、いそいそと秋葉の背後に回った梶原に、秋葉は面映ゆさを感じずにはいられない。
「つけますよ、秋葉さん」
首に手を回す前に、梶原は秋葉に一声かけてくる。
秋葉が頷くと梶原の手が背後から伸ばされ、首元にひんやりとした質感としっとりとした重みを感じた。
「はい、出来ました。秋葉さん…こっち向いて?」
項に触れる梶原の指が離れたのを少々名残惜しく思いながら、秋葉が振り返ると。
じっと見つめてくる梶原の、真剣な視線があった。
それでいて言葉を発しない梶原に、秋葉が居心地の悪さを感じはじめた頃。
漸く梶原が呟いた。
「…うん、やっぱり似合う…」
「…そう?」
あまりの沈黙の長さに僅かに湧いた疑念が…秋葉が思っていたよりも拗ねた声になって出た。
その声を聞いた梶原の頬が緩み、盛大に笑み崩れ。
そのまま梶原が抱きついてくるのを辛うじて受け止めつつ、秋葉は、大型犬が戯れてくるイメージが脳裏に浮かぶのを止められなかった。
「凄くかっこいいです!思わず見惚れちゃいましたっ!秋葉さんに絶対似合うと思って買ったんです!!…あ…」
途切れた言葉に、梶原の顔を腕の中から上目遣いに見上げれば。
『しまった』と大きく顔に書いてある気がするのは、秋葉の気のせいだろうか。
「プレゼント、だったの?…ありがとう」
「いえ…その…」
秋葉の謝辞にも、梶原は自分の失言へ意識がいっているのか、むぐむぐと口ごもってしまう。
その珍しい様に、秋葉は微笑を浮かべると梶原の頭を引き寄せた。
まだ何事か言い続けている梶原の耳元に唇を近付け囁く。
「ありがとう、梶原。……」
最後の言葉は、更に声を密めて。
「!?えっ?何?今、何て言ったの?秋葉さんっ!」
「一回しか、言わない」
驚いて顔をあげた梶原を秋葉が見つめていた。
いつもの少しだけ意地悪な、でも優しい微笑みで。
今度は。梶原が秋葉を引き寄せれば。
秋葉の首元で、鎖と十字架がちりりと小さな音を立てた。




「あ、あれ、お前に似合いそう…」
「え?どれですか?」
「ほら…あそこの…」
「…秋葉さん、あれ、大型犬用の首輪、なんですけど…」
「ちょうどいいから、買っていく?」
「…秋葉さん、俺の話、聞いてますか?」
「お前なんか、わんこ用で充分」
「…もう、凄く反省してますから。二度とやってなんて、言いませんから〜!」
「…こんな往来でいう自体…反省が見られないんだけど。…鎖もいる?」
「ご、ごめんなさいっ!秋葉さんっ!!」
「…首輪は購入決定、な?」
「…ゴメンナサイ…」

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