職員通用口

□海(梶×秋)
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人の身体の中には

海があるという


あなたを抱いていると

時々それが

よく分かる



まるで身体の中に存在する海の、その満ち引きに翻弄されるように。
揺れる。
例え耳元で名前を呼んでも虚ろな意識はどこか遠くへ。
「……っ」
梶原の腕の中で、秋葉の背中がしなやかに反らされる。
まるで猫のようだと頭の片隅で思う。
彼が一番弱い場所。首筋の、その一点に唇を寄せて、逃がさないように強く抱き締める。いっそのこと、この首筋に消えない赤い跡をつけてしまいたい。
梶原はその衝動をギリギリの所で堪えた。
心の内側に広がる……怒り、なのだろうかこれは。
「秋葉さんが、そんなに自分自身の事が嫌いなら……」
もう、いい。それでも構わない。
「俺に下さい、この身体も心も」
少し乱暴にその手首をシーツに押さえ付けて梶原は呟いた。
秋葉は浅い呼吸の中、僅かに痛みを含んだ目で梶原を見つめている。
他の何者も、死神でさえも入り込む余地がないほどに。
秋葉の内側を自分で満たしてしまいたい。
梶原は秋葉に深く口付け、舌をその口内に侵入させながら右手で秋葉の太股を撫で上げた。
どこに触れれば、秋葉が噛み締めた唇を解いて声を上げるのか。
そんな事はもう分かっているから。
それでももう一度彼の気を逸らして痛みを軽減するために、梶原は秋葉の首筋を吸った。跳ね上がる身体を押さえ、時間をかけて慣らした最奥に自身をあてがう。
「い…や……っあっ」
苦痛を伴う儀式。
「まだ…全部入ってない、ですよ」
冷酷に告げて。
「……、あ、ぁ…」
弓なりにしなる秋葉の身体を、どこにも逃げ場がない所まで追い詰める。
「逃がさない」
上へ上へと無意識に逃げる身体を更に強く抱き締めて。
「全部、入った…あなたの奥まで」
意図的に耳元で秋葉を煽る言葉を囁く。
「秋葉さん、熱い…。分かり、ますか…?」
広げられたそこを指先でなぞる。
秋葉はシーツに爪を立て、顔を背けた。
秋葉の呼吸と合わせる事なく、一度。
強く突き上げると、秋葉は苦しげに首を振った。
「……か、じ、わら……あっ」
「俺に縋ってよ…秋葉さん…」
梶原は、強張った秋葉の手を開かせて指を絡めた。
微かに震える指先が、いかにこの行為が常軌を逸しているのかという事を知らしめる。
これは決して、情愛の交換ではなく、まして動物的な生殖行為でもない。
ただの暴力だ。
「いやだ…っ、…いや…っ!」
秋葉の叫びを聞きながら、梶原はどうしようもない衝動と焦燥に駆られて秋葉を穿つ。
「も……っ離し、て…離せ…っ!」
秋葉の爪が梶原の手の甲に食い込む。
「梶、原…っ…離…して…っ」
じわじわと侵略されていく心と、身体。
秋葉が満ちては引く抗い難い力に流され始める。
「いや………っ」
否定の言葉を口にするのは、その証拠。
「海、みたいだね…秋葉さん……」


理性を捨てて、ここまでおいで

孤独な心を
埋めてあげるから

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