職員通用口

□嵐の夜に(仮題・梶×秋)
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吐息が乱れる瞬間。
その指先が頬を掠めるように撫でてくる瞬間が好きだ。

もっと、欲情して見せてほしい。
もっと、切ない表情を見せてほしい。

それで安心できるなんて。

どうかしてる。



滑らかに絡んでくる舌先。
温かな口内に含まれて、あっけなく果ててしまいそうになる。
秋葉は揺れる梶原の腰を左手で押さえ、唇と右手の指先で梶原をゆるゆると追い詰めていく。
「秋葉、さ、ん……っ」
声をあげ、反応する箇所を的確に責めたてながら。
「秋葉さん…っ!待…って…っ!」
濡れた音に更に煽られ、梶原は叫んだ。秋葉は一度梶原から離れ、腹から胸、首筋から唇へと、そっとなぞるように唇を滑らせる。
梶原は秋葉の黒い髪に指先を絡め、求められるまま深い口づけを交わした。
舌を伝って広がる、微かに苦い味。
間近で秋葉に濡れた瞳を覗き込まれる。
「お前の、目…。綺麗な茶色だな…髪と、一緒…」
細い指先で髪を梳かれ、梶原は息を弾ませながらも笑む。
こんな暗い部屋で、今、瞳の色など分かるはずもない。
「…秋葉さん…」
逆にあなたの髪と目は、この闇に馴染む夜の色だと。
その呟きは、再び秋葉が重ねて来た唇に塞がれた。
時折、秋葉は梶原に抱かれたがる。
素直に口に出しては来ず、こうして全身で誘う。


こんな、夜は。




秋葉の背中がしなやかに反った。
「……あ、ぁっ…」
外は嵐だ。
ざあ、という風の音に混じり、横殴りの雨音も聞こえる。
「梶原…っ、ん、ぁ…っ」
梶原の手に腰を支えられ、下から突き上げられながら秋葉は乱れた。
「秋葉、さん…」
梶原が呼ぶと、腕を掴んでいた秋葉の指先に僅かな力が入る。
そのまま倒れ込むように梶原の額に自分の額をつけて。
快楽に揺らされ、翻弄されている姿を見せつける。
乱れた黒い髪が、汗ばんだ頬に一筋だけ残り。
その、夜を思わせる漆黒の色が梶原の目に鮮やかに焼き付いた。
「身体…起こして…」
梶原がそっと秋葉の肩を押し上げる。
「あ…ぁ…っい、やぁ…っ」
更に奥まで穿たれ、その熱に追い上げられる。
「……っ」
一瞬、秋葉に締め付けられ、梶原は眉根を寄せて快感をやり過ごす。
ふと秋葉が指先を梶原の口元に触れさせた。
「……どう、したの?」
抱かれながら秋葉が時折見せる、あどけない表情。
梶原はその目が好きだ。
「俺を…犯してる、気分に、なった…?」
その問いに、秋葉は笑んだ。
あどけなさは消え、艶やかな笑みがそこに生まれる。
「……っ」
秋葉の指先を梶原は甘く噛んだ。
それに舌を絡めれば突然に上がる心拍数が伝わる。
「秋葉さん…?」
梶原は秋葉の腰を掴むと一度大きく突き上げる。
「…ん、ぁ……っ」
秋葉は再び、切なく艶めかしい声をあげた。
「まだ…冷静なんですね…俺ばっかり、追い詰められちゃう」
梶原は秋葉の右足に手をかけて自分の足に沿わせて後ろに伸ばし、そのまま体勢を入れ替える。
秋葉の身体を組み敷いて、梶原は秋葉が目を開けるのを待った。
「やっぱり、秋葉さんに攻められたら…俺、すぐイっちゃいそうになるから…」
その耳元で悪戯っぽく囁けば、ようやく秋葉は目を開ける。
「それとも早く、終わらせたい、ですか…?」
秋葉は喉を震わせ、目を見開いた。
「そんなに、締め付けないで…」
雨が激しさを増す。風が窓を叩く音の合間に聞こえる、秋葉の息遣いが熱を帯びていく。
「い…や…っ…」
秋葉は膝の裏にかけられた梶原の手を掴み、その動きに抵抗しようとした。
梶原は微笑を浮かべ、その手をやんわりと取る。
「駄目…。俺を秋葉さんの奥まで入れさせて…。もっと…足、開いて」
梶原の囁きは優しく、秋葉から恐れを取り除いていく。
だが、徐々に開かれる足を、秋葉は無意識に閉じようとしてしまう。
「閉じないで…力、抜いて…っ」
震える内股を指先でそっと撫でられ、秋葉の身体がびくりと跳ねた。
「…もう少し、奥まで…秋葉さんを、感じたいから…」
「………っ」
秋葉の白い喉元は綺麗に反らされ。
唇は噛み締められて最も奥深い場所まで熱の塊を埋められた感覚に全身で耐えようとしている。
梶原は宥めるような口付けを秋葉に施し、ゆっくりと秋葉を揺すり上げた。
「ん……っ」
圧迫され押し出される吐息。
秋葉が酸素を求めて息を吸い込む度に、喉が音を立てる。
「あ…ぁ…っ」
喜悦が滲む喘ぎ声をあげる秋葉が少しずつ自分自身を制御できなくなっていく。
秋葉の身体から伝わる快楽。
それが否応なしに梶原を追い上げていく。
「…ここが、気持ちイイ、の?」
秋葉の上体が跳ね上がる。
梶原はそれを押さえ込むように秋葉の身体をきつく抱き締め、その耳元に唇を寄せた。
柔らかく耳朶を噛み、直に熱い吐息を聞かせる。
汗に濡れた肌を合わせ、背中に回された秋葉の手が梶原を抱き締めた。
「梶、原…っ」
梶原から与えられる律動に、熱に浮かされたような声で、ねだる。
「ぁ、あ……っ」
秋葉の意図的に締め付けに、梶原は目を固く閉じ。
その身体から自分も快感を得ているのだと秋葉に教える。
何度も梶原の髪に指を絡め、秋葉は嬌声を上げた。
「梶原…っも…っイ、く…っ」
それは震える密やかな声。
梶原は身体を起こし、初めて秋葉自身に触れた。
「い、ぁ…っ」
焦らすように与えられる刺激に、秋葉は懇願するように梶原に手を伸ばした。
その淫らに潤んだ目は、闇の色。
深い、黒。
「……く…っ、あぁ…っ」
悲鳴をあげ。
身体を硬直させて秋葉が果てる。
「秋葉…さん…っ」
締め付けられながら、梶原も秋葉の奥深い場所で欲望を吐き出した。
互いの鼓動と吐息は、風と雨の音に消され。
もう一度梶原は秋葉を抱き締めて、貪るような口付けをした。
その、死を湛える冷たい唇に。
温かな命を吹き込むように。

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