職員通用口

□あなたの心に(梶×秋)
1ページ/1ページ

アナタノ心ヲ

全部クダサイ



心が飢え渇いて。
渇いて、渇いて。
あなたという水を欲している。
「秋葉さん…」
掠れた声で呼べば、秋葉の身体がぴくりと跳ねて反応する。
梶原は後ろから秋葉を抱き、深く穿ちながら身体を重ね、衝動に任せて目の前に晒されている首筋を噛んだ。
跡が残る程、きつく。
「…ん…っあぁ…」
秋葉の細い肢体は微かに震え、熱い内部が梶原を締め付けた。
目眩がしそうだった。
獣のように秋葉を押さえ込み、完全に自由を奪う。
捕らえた腰を揺すりあげると、悲鳴の様な嬌声が秋葉の喉を擦り抜けた。
「もっと…だよ。秋葉、さん…」
梶原の顎を汗が伝い、秋葉の背に滴り落ちる。
もっと…もっと堕ちてきて欲しい。
いっそ、何もかも棄てて。
「ぁ……っ」
秋葉は浅い呼吸を繰り返し、喉を反らせた。
その喉元を手のひらで撫で、更に秋葉を揺さぶる。
血の気を失う程に固く、シーツを握り締めた秋葉の手に自分の手を重ね。
梶原はただ、秋葉の身体を貪るように激しく抱いた。
「か、じ……、く、ぁ!」
常とは異なる梶原の様子に、秋葉は戸惑いの声を発したが。
その声は快楽に濡れ落ちる。
秋葉の呼び掛けに、梶原が短く笑声を洩らした。
「あ、きば…さん」
浮き上がった秋葉の背の、羽根の名残にも歯を立てる。
「!…っう」
強く食まれ、秋葉は呻く。
きつい痛みの奥に、疼痛のような快感があった。
「…ふっ」
ただ、与えられるその悦楽を追ううちに、唐突に繋がりを解かれる。
ずるりとした感覚に秋葉の身体が震えた。
「……っ」
仰向けにされ、両脚を開かれ。
もう一度、奥まで貫かれる衝撃に、秋葉は目を閉じた。
激情に流されていく。
それならば。
「梶原……っ梶、原……」
秋葉が梶原を呼び、首に両腕で縋りつく。
全て、奪えばいい。
心も身体も。
繰り返し与えられる快感は、心を裂く痛みと似ていて。
秋葉の心を砕いていく。
お互いが飢え渇いているのだと、秋葉は梶原の熱を受け入れながら、思う。
「温かい…ね、秋葉さん…の、中…っ」
梶原に絡み付き、理性の欠片さえ奪うその温度は。
決して秋葉の表面的な部分では感じられない温度。
梶原は吐息と共に呟く。
「秋葉さん…っお願い……」
心を。
あなたの心を。
その、孤独で埋め尽くされた心を。
「俺、に……っ」
見せて。
深い爪痕に触れさせて。
その、ひび割れた暗闇に、触れさせて。
「秋葉、さん…っ」
「あ、ぁ…、は…っ」
律動と共に、秋葉の苦しげな声が押し出される。
虚ろに視線を揺らめかせ、秋葉は身を捩る。
「逃げ、ないで…」
上へ上へと逃れようとする身体を引き寄せ、更に深く。
「あぁっ!」
悲鳴を封じるように、梶原は秋葉の唇を塞いだ。
「ん…っんん…」
舌を絡めれば、秋葉の鼻にかかった甘い声が漏れる。
濡れた音色と声音が互いに纏わりつき、まるで世界に2人だけ取り残されたかの様な錯覚すら覚える。
そこは、一の幻想を抱いた孤独の世界。
こんなにも近くにいるのに。どこまでも、遠い。
くすり、とキスの合間に梶原は笑った。
「…誰も。いない。…みたいな気持ちに。なりませんか…?」
追い詰める様なそれから緩やかな動きに変じると、柔らかく秋葉の唇をついばみながら問う。
「…っ、…な、に…?」
「誰も、いなければ…いいのに、ね……」
「………」
柔らかく抱き締められ、緩やかに奈落へと落とされていく。
ゆらり。
見上げた天井が揺らめいた。
秋葉はひとつ瞬きをする。
流れ落ちた涙を、梶原が舐めた。
優しいキスはいらない。魂も心も。
身体も。
何も、いらない。
だから、奪えばいい。
何もかもを。
「梶原……」
肩口に埋められた梶原の頭を、秋葉は何度も撫でた。
動きを緩やかに変えた事で、一気に梶原の背中に汗が滲む。
その濡れた背を掻き抱き。
ぴたりと密着した胸から響いてくる鼓動を感じる。
「ぁ……」
左肩をきつく吸われ、秋葉は梶原の背中に爪を立てた。
「んぅ…っ」
「ここ……感じるんだ?」
秋葉は首を振る。
それは否定にも肯定にもとれて。
「イきそう…?」
梶原は浅く秋葉を突きながら。小刻みに震える秋葉の身体を手のひらで撫でる。
「違…っあぁ…、ん…っ」
「身体が反応してるよ?」
縋っていた背中から滑り落ちた、その指に指を絡め。
「誰の、せ…い…で…っ」
梶原に抱かれる度に傷跡の存在を教え込まれる。
くわえ込んだ内部で、梶原が跳ねた。
「俺のせい…に、してくれる、の?」
「っ!…やっ、ぁ…」
暈を増した梶原に、秋葉は耐えかねたように再び頭を振る。
汗の雫が濡れた黒髪から散った。
「いいよ……俺の、せいに…して…」
梶原は舌先でそっと撫でるように、その傷跡を舐めた。
その細やかな刺激に、秋葉は一気に陥落してしまいそうになる。
「…………っ」
足を絡ませ、更なる刺激をねだるように腰を押し付けてくる秋葉の頬を、やんわりと撫で。
梶原は笑う。
身体を起こし、秋葉が一番感じる箇所だけを執拗に責めて。
狂わせる。
「そこ…嫌……っ!!んぁあ……っ」
手の内に捕らえた秋葉は、淫らに揺れ続ける。
征服欲も、独占欲も。
何もかもを愛というオブラートに包み込んで、梶原は、ただ秋葉の身体に溺れる。
やがて秋葉は、静かに果てていく。
波打つように幾度か跳ねる秋葉を抱き締め、梶原も最後に幾度か激しく秋葉を突き上げた。
お互いの荒い呼吸だけが響く、部屋。
目を閉じていた秋葉が、梶原の背に手を伸ばす。
「梶原………」
身体を駆け巡った快感の余韻に掠れ切った声が、梶原を密やかに呼ぶ。
「ここにいるよ……?」
秋葉の身体にこれ以上の負担はかけたくない。
濡れた背中に両手を回し、自分の方へと引き寄せようとする秋葉に、梶原は僅かに抵抗した。
「お願い……もっと…身体、重ねて」
「秋葉さん………」
震える両手が、梶原を求める。
「お願い……」
繋がっていた身体を解いてしまえば、また、秋葉の心は彷徨い揺れる。
梶原は、ゆっくりと秋葉を抱き締め、秋葉の身体にぴたりと自分の身体を重ねた。
「重くない?」
秋葉の深い吐息を聞きながら、梶原は問いかける。
整わない鼓動が交じり合う。
心の在り処もまだ分からないけれど。
「………ありがとう……」
微かに聞こえた、秋葉の声に。
冷たい頬を寄せてくる、その、彼なりの精一杯の甘え方に。
梶原は深い口付けで応える。


いつか。
あなたの心に触れられる日が、来るだろうか。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ