職員通用口

□戯れ
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雨のせいだろうか、少し肌寒い気がする。
梶原は秋葉の穏やかな寝顔を見つめている。
今朝、夜勤が明け、ここで秋葉を抱き締めて眠った。
お互いに疲れ切っていて、秋葉は例によってスイッチが切れたように意識を途切れさせて眠りに就いた。
この時だけは、梶原は秋葉の寝顔をゆっくりと見つめる事ができる。
夕刻を過ぎ部屋の中は薄暗い。
深い呼吸を繰り返す、あどけないその表情を見つめていると、不意に秋葉に触れたくなった。
頬に指先で触れ、そして背中から胸、そして下腹から下肢へと手のひらを滑らせる。
「……ゃ、だ…まだ眠……い…」
秋葉は梶原に触れられて目を閉じたまま、舌足らずな甘えた声で抗議する。
「……や、だ…」
梶原は抗おうとする秋葉の手を掴み、己の、存在を主張し始めた箇所へ導いた。
「…秋葉さん、好き」
柔らかく諫めるように秋葉が撫でると、手の中の梶原が跳ねる。
「ぁ……ぴくって…した…」
くすくすと笑う秋葉はまだ夢の中の住人だ。
唇を重ねれば、秋葉は素直に応えてきた。
深く侵入してきた梶原の舌を自らの舌で絡め取る。
「ん……っ、く、ぅ…」
微睡みの中を漂っている秋葉は、梶原にやんわりとパジャマの上から触れられながら、同じように手のひらを使って梶原を刺激する。
「気持ちいい?ちゃんと俺にも触って…秋葉さんに欲情してるから…」
「ん……ぁ…っ」
既に布越しではなく肌に触れていた梶原の指先で、先端を円を描くように撫でられ秋葉は喉を反らせた。
「…濡れてきた」
滲んだ雫を指で広げ、梶原は秋葉の耳元に囁いた。
「あ……した、も…仕事…っ!」
秋葉の意識が現実へと引き寄せられ始める。
梶原はそれを留めるように再び深く時間をかけて秋葉に口付けた。
ぴちゃりと濡れた音が耳朶を打ち。
吐息と共に重なり合う唇が解けた。
燕下しきれない唾液が秋葉の顎を伝う。
「…うん……」
そういいつつ梶原は秋葉の髪に鼻梁を埋めるようにして、耳の付け根を吸い上げた。
「……ん…っ」
「秋葉さんのも、ぴくってしたよ?…気持ち、いい?」
ひくりと身を竦ませる秋葉に笑いを滲ませながら、梶原が再び問う。
彼の手は相変わらず秋葉へと穏やかな愛撫を施していた。
「ゃ、…ふ、…」
焦れたように秋葉から触れてくる手が、ウエストのゴムを掻い潜り下着の中へ忍び入る。
「っ!」
直に触れられ梶原が息を詰めると、秋葉が微笑した。
「…気持ち、いい?」
お返しとばかり聞き返してくる秋葉に、梶原は鎖骨を甘噛みすると白い肌に赤く遺った跡を舌でなぞる。
「凄く、いい。…秋葉さんは?」
喉元へ梶原の呼気が触れるのに、粟立つような心地よさが秋葉の背筋を這った。
「ん……気持ち、いい。…ぁ、擽った…ぃ」
「…擽ったい、だけ?」
上着のボタンを一つ、器用に歯で外した梶原が秋葉の胸の尖りを舌で突く。
乳暈ごと口に含みちゅくちゅくと音を立て吸うと、秋葉の腰が緩く蠢き梶原の手に自身を擦り付けた。
「そこ、やだ…」
「じゃあ、…どこがいいの?教えて?」
意地の悪い問いに、秋葉は下着をずり下ろすようにして引き出していた梶原を握る手にきゅうっと、僅かながら力を込めた。
頂きから雫が零れ繊手を濡らす。
「っ!…ふぅ。…そこ、して欲しいの?」
自身を些か強く刺激され、梶原は息を深く吐き出した。
「ぁ…っ、やぁ、……ん」
「このまま?…それとも口で?」
ゆるゆると手を動かすと腰を捩る秋葉に、梶原は笑顔を浮かべる。
「…や、だ…」
「やだ、じゃ判らないよ、秋葉さん」
笑んだまま指でやんわりと秋葉の筋を撫で下ろした。
堪えるように秋葉が首を左右に振る。
「ぁ、梶…原、…ふぁ!」
「なら、俺がしたいようにする。いいよね」
名を呼ぶ声に、梶原は己の屹立に触れていた秋葉の手を取ると一つ口付けを落とした。


「あっ!…ゃ、だっ…それ!…ぁ」
梶原に袋ごと双珠をやわやわと唇で食まれ、秋葉は反射的に顎を上げた。
口に含んでいた梶原が外れて秋葉の頬に当たる。
唾液と溢れた密にしとどに濡れた熱が頬を擦り、そんな些細な刺激にも秋葉は薄い瞼を震わせた。
「やだ、じゃなくって…好き、でしょう。こうされるの」
横向きの体制で、互いの股間に顔を埋め合う。
ぐちゅ、くちゅと淫らな水音と荒い息が、耳の側と少し離れた箇所から聞こえ、直に齎される快感を更に昂揚させた。
そのまま膨らみを口に含むと、梶原は秋葉自身にも指で慰めを与えつつ後孔にも濡らした指を忍ばせる。
少しだけ指を飲み込ませたところでくるりと丸く円を描いた。
「ゃあっ!…し、ないって…」
「…まだ入れないよ。でも秋葉さん、気持ち良いでしょう?」
手を添え、固く立ち上がった梶原を再び口に迎えようとしていた秋葉は小さく悲鳴を挙げた。
「だっ、れの所為ぃ…だと…思っ……んっ!」
梶原のあまりの言い様に、秋葉は抗議の声を発したが熱に溶けたそれでは意味を為さない。
「俺の所為、だよね。大丈夫、ちゃんと責任、とる、…くっ!」
秋葉が尖らせた舌先で、梶原の先端を猫の様に舐める。
梶原は再び秋葉を根元まで含み、舌と上顎を使って扱き上げた。
梶原の太股にかけた秋葉の手が、逃れられない快感に震える。
「……っ、…あ、ぅ…」
2本目の指を挿れられ、秋葉は息を飲んだ。
確かに。
梶原の言う通り、もうこの身体は以前とは違う。
梶原の指の形を覚え、梶原の熱を教え込まれ。
快感を呼び起こされる。
与えられる悦楽を彼にも返したくて、秋葉は懸命に梶原を含み、愛撫を繰り返した。
「ん……っ」
腰をゆるゆると揺らす梶原の甘い声が聞こえ、秋葉は目を閉じる。
「力…抜いて…」
梶原は秋葉を離し、後孔に挿れた2本の指をばらばらに動かす。
「ん……ん…っ」
一番感じる場所を掠めるような動き。
「…欲しく、なった…?」
焦れたような秋葉の声に、梶原は笑う。
「指じゃ…満足できない…?」
「…んぁ、ああっ!」
ぐい、と深く指を挿れ、秋葉が刺激を欲しがっていた場所を断続的に擦る。
「…ぁ…っ!!」
唐突に梶原が秋葉の中から指を引き抜く。
「ゃ……、な、に……っ?」
秋葉の問いには無言で梶原は身体を起こすと、秋葉の身体に手をかけ、うつ伏せにした。
「やだ……っ!嫌………っ」
「ごめんね、秋葉さん……」
捕らえた腰を浮かせて引き寄せ、梶原は秋葉の脚を開かせる。
欲しくなったのも満足できなくなったのも、秋葉ではなく自分の方。
「嘘、吐き……っ!!」
押さえ込まれたまま、秋葉が声を上げた。
梶原の右手だけが見え、その指先がサイドボードからゴムを取り上げる。
「やめ……」
かさり、とパッケージが外される音がした。
「嘘なんて、吐いてないよ……」
背中から梶原の手が離れた瞬間、秋葉は身体を捩ったが、すぐにその抵抗は封じられる。
「あ、……あ……っ」
身体を割いて梶原の熱がゆっくりと捩じ込まれた。
後ろから梶原を受け入れるこの体勢に、秋葉は本能的に恐怖を覚える事を知っているはずなのに。
梶原は無言のまま、秋葉をじりじりと貫いていく。
「は……っんん………」
秋葉は浅い呼吸を繰り返し、固く目を閉じる。
恐い。
「嫌……っ梶原、あ……っ」
秋葉は微かな悲鳴を上げる。
閉じた目から、涙が零れた。
肌と肌が触れ、梶原の全てが自分の体内に入れられた事を感じる。
吐息が聞こえ、緩やかに梶原が動く。
「ぁ、あ…っ…」
押し付けられ、否応なしに声が喉を擦り抜けていく。
梶原は、秋葉の手に自分の手を重ね、一度指をきつく絡める。
「…ん…っ」
秋葉がそれに縋る間も与えず、すう、と指先で腕をなで上げ、肩をなぞり。
そのまま背中から腰までを手のひらで撫でた。
「気持ちイイ?とろけそうだね…」
ようやく聞こえた梶原の声は、何処か遠い。
「……っ」
ゆるゆると後ろから突かれ、秋葉はこれ以上声を上げてしまわないように、自分の左手の甲をきつく噛んだ。
「駄目、だよ…声が聞きたいから…それにそんな目立つ所に歯形がついたら、困るでしょう…」
その手を腕から後ろに引かれ、上体が捻られる。
「ふ…ぁあっ…く…っ」
「もっと…って言って?そしたらあなたが欲しいものをちゃんとあげる…」
浅い部分で焦らすように動く彼は、そう言って笑った。
「…ん、ぅ…っ」
根元で指先に戒められた秋葉自身は、張り詰めて限界を訴えていた。
「…あげるから…」
「ぅあ、あ、…や…め…っ」
梶原の爪の先が、絶えず雫を零す秋葉の先端に触れる。
「や…っあ、んぁぁ…っ」
敏感な括れにやんわりと爪をたてれば、秋葉の身体が跳ねあがる。
「ほら…、そんなに締め付けたら動けないよ?」
捕らえた左腕を更に引き、秋葉の上体を完全にシーツの上に押し付けた。
高く腰を上げる姿勢に、秋葉の理性は砕かれる。
右手はシーツにしがみつくように爪をたて、秋葉はせき止められて捌け口を探して身体中を巡る甘い毒に酔わされていく。
「も…っと…」
掠れた声で秋葉は懇願する。
「もっと、どうするの?どうして欲しいか言って?」
ぴたりと律動を止めた梶原は、囁く。
「も……っと…、奥まで、突いて…っメチャクチャに…して…っ」
くすり、と笑う梶原の吐息が秋葉の左肩をくすぐった。
途端。
ぐい、と梶原の熱が深い場所へ侵入してくる。
「あぁっ!」
秋葉の背中がしなった。
「あなたのイイ場所なら、全部分かるよ…ココ、でしょう?」
今までの緩やかな抽挿が嘘のように。
梶原は激しく秋葉を犯す。
「…ぁ…っ梶…んぁああっ」
抜き挿しに合わせて、梶原は手に包んだ濡れた秋葉自身を扱いてみせる。
「やぁぁっ!…イ、…くっ…」
悲鳴を上げて秋葉は首を振る。
「イきたい?」
梶原の肌から、秋葉の背中へ。
汗が一滴落ちた。
秋葉の滑らかな肌の上でそれが形を変えて散る。
「いいよ、イかせてあげる……」
「あ…っ…ぁ、んぅ…っ」
前立腺を抉り、秋葉の快感を押し上げていく。
「ああぁ…っ!!」
びくびくと震え、秋葉は梶原の手に欲を吐き出す。
梶原は息を詰め、締め付けられる衝撃に耐える。
「すごく、淫らで…綺麗だよ、秋葉さん…」
自分だけが追い上げられ、呆然と秋葉は雨の音を聞いた。
息が整わないままの秋葉の耳に、梶原は笑い含みにそんな言葉を流し込む。
「じゃあ、次は俺をイかせて?」
ぽたぽたとシーツの上に秋葉から雫が落ち、いくつもの染みを作っていく。
「ん、ぁ…あ…っ」
梶原が動く度、彼で満たされた内部が熱い。
「秋葉さんも、もう一回イけそう…だね…?」
手の中で再び芯を持つ秋葉を感じ、梶原は笑った。
秋葉は薄く目を開け、梶原を探す。
懸命に左手を後ろへ伸ばし、梶原の腕に触れようとした。
しかしそれは叶わず、秋葉の手は力なくシーツの上に落ちる。
「……秋葉さん……」
密やかな喘ぎを漏らす秋葉の身体を、梶原は背中から抱き締めた。
ようやく心細い身体と心を梶原に包まれ、秋葉は安堵の吐息を零す。
「ゃ……あ、あ…っ…んぅ……っ」
梶原の髪が、項に触れた。
汗ばんだ背中を舌先で舐められ、秋葉は震える。
「……締め付けすぎ……秋葉さん…」
くすり、と梶原が笑う、息が肌を擽った。
「も……梶、原………っ」
首を振る秋葉を宥める様に、梶原は律動を止めて秋葉の熱を手の中で育てる。
「まだ、メチャクチャにしてない、よ……」
揶揄する言葉に、秋葉はまた首を何度も横に振った。
埋め込まれた熱にも、淫靡に蠢く大きな手のひらにも。
そのどちらにも意識を翻弄される。
秋葉は続きをねだる様に、自ら腰を揺らした。
「………っ凶悪だね、秋葉さん……」
濡れた髪の間に見える、秋葉の耳朶を食み。
梶原は再び秋葉を崩し始めた。

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