公安第一課4(裏)

□kiss or lullaby
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「kiss or lullaby」

キスをしようか

それとも

子守歌を?


空調は適温のはずだった。
それなのに、ふと寒さを感じて秋葉は目を開ける。
もしかしたらずっと眠らずに起きていたのかも知れない。
見慣れた自室の天井、肌に触れるシーツの感触。
すぐ傍からは梶原の穏やかな寝息が聞こえている。
静かな夜だ。
時計を見るのは億劫だったので、推測で午前2時。
遠くの幹線道路を走る大型車の音が聞こえる。
カーテンの向こうから入ってくる薄明かりで、梶原の顔のラインがよく分かった。
寒さを感じたのは、感覚ではなく心だと思った。
秋葉が逃れたのか、梶原が逃れたのか。
いつもならば寄り添って眠る身体が離れていた。
ぞく、と背を這う寒気を感じて秋葉は震える。
それに呼応して心拍がざわめいた。
「……眠れないの?……寒い?」
息苦しさを感じて手を伸ばそうとした時、梶原がふわりと秋葉を抱き寄せた。
秋葉の微かな震えを感じ取ったのか、梶原は自分のタオルケットを秋葉の身体にかけて一緒にくるまる。
「眠れないし……寒い…」
温かい梶原の腕にタオルケットごと抱き込まれ、安堵しながら秋葉は呟く。
「困ったね……」
たいして困ったような口調でもなく、梶原は秋葉の背を撫でた。
優しい手のひらがくすぐったくて、秋葉は背を逸らして梶原にもう少しだけ身体を寄せる。
間近に感じる吐息。
梶原は目を閉じたままだった。
「じゃあ、キスしようか。それとも子守歌がいい?」
「……」
どんな選択肢だ、と秋葉は少し首を傾げる。
「両方がいい…」
外に出した冷たい指先で梶原の頬をなぞり、秋葉は梶原に口付けた。
戯れるような軽いものから、徐々に互いの舌を絡め合う。
「眠れなくなっちゃうよ?」
「………いい」
呼吸ごと奪われるような口付けの合間、悪戯っぽく梶原から問いかけられて秋葉は笑った。

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