自動車警ら隊(リクエスト)

□拾い物
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交番勤務を始めてはや数ヶ月。
制服も、少しは板についてきたかな。
交番には、毎日朝から晩までいろんなお客様がやってくる。
道案内・喧嘩の仲裁・事件事故の現場保存。
更に夜中にはテンションの高い酔っ払いがやってくるし。
でも、少し慣れてきた。
大坪さんに怒られる回数も減った…気がする。多分。
あ、もう一個よくある仕事があった。
落し物、ね。
「あの〜…」
20代前半の茶髪に左耳にピアスがぞろり、の男が、交番に恐る恐る入ってきたのは午後2時。お前の耳はルーズリーフかっての。
決めた。お前の名前はこれからルーズリーフな。
「どうしました?」
俺と、数人の同僚が一斉に声を上げる。
その勢いに若干気圧されたように、ルーズリーフは足を止めた。
「お前、行け。梶原」
そう言われて、俺はカウンター越しにルーズリーフに笑顔を向けた。
「これ…拾っちゃったんですけど。っていうか…チャリの籠に入ってて……」
見かけによらず、丁寧な物言いだ。
がさり、と白い紙袋を差し出され、それを覗き込む。
「…………何、これ。かわいい……」
俺は思わず呟いた。それを聞いて、大坪さん達も紙袋を覗き込んだ。
傍から見たら、面白かっただろうな。
頭をつき合わせて紙袋を覗き込む、5人の警察官。
「鴨……の雛?」
同期の吉田巡査が首を傾げた。
「……かも?」
俺としては、そうかもね?という意味の答えだったが、大坪さんに頭をはたかれた。
「アホか!」
「鴨かも?って意味ですよ!!」
はたかれすぎて、脳細胞が減ったらどうしてくれる。
「鴨か」
「鴨だよ」
「鴨ならば」
「いやいや、冗談言ってる場合じゃないし」
今日のシフトは若手が多いし、あまり切迫した事柄でもないので自然と緊張感が緩んでしまう。
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