公安第一課(裏?)

□This Love
1ページ/1ページ

眠りに落ちる寸前に

おやすみのキスをして
君が眠ったその後は

月曜は一睡もできず
火曜は訳の分からない嫌な夢を見て


水曜の夜。
繰り返される緩やかな呼吸。
梶原は、珍しく自分よりも早く眠ってしまった秋葉の静かな寝息を聞いていた。
今日は朝まで眠れるといい。
自分ではなく、秋葉が。
きっと自分が眠っている間に、秋葉は独り、目を覚ましている事が多いのだろうけれど。
いつもより深い呼吸音を聞きながら、梶原もうとうとと目を閉じる。
梶原は寝つきがいい。ほんの数秒で眠ってしまえるのは、特技として履歴書に書いてもいいのではないかと思うくらいだ。
夢は見ているのかも知れないが、ほとんど覚えていない。
それくらい熟睡できる。
今夜も、明日の仕事の事を考える間もなく意識がなくなった。



ふと空気が動く。
秋葉の呼吸が乱れた。引きつった様に息を吸い込み、咳き込み続ける。
梶原は自分に背中を向けている秋葉の身体を後ろから抱き締めた。
「どうしたんですか」
シーツを握り締めている秋葉の右手に自分の手のひらを重ね、引き寄せる。
「悪、い……起こした…」
そう言いながら顔を枕に押し付け、息を殺す。
「時々、ありますよね?これ……もしかして喘息とか…ですか?」
「違、う……」
喘ぐように酸素を求めて秋葉は身体を丸めた。
こんな時も、秋葉は絶対にその表情を梶原には見せない。
それは梶原にとって切ない事ではあったけれど。
「大丈夫」
秋葉をやんわりと守るように抱き締め、その背中を自分の身体で温めながら梶原はそう呟いた。
固く握り締められたままの冷たい手は、両手で包み込む。
「大丈夫……」
秋葉の身体から強張りが解けるのを感じながら、梶原は目を閉じた。



秋葉は梶原の腕の中に閉じ込められたまま、薄明かりの部屋の中で目を開けていた。
秋葉の両手を包む、温かい梶原の手のひら。
この手に、何度も救われる自分がいて。
しかし、この手に縋り切れない自分もいる。
独りでいた方が楽だったのか、それとも。
既にここまで梶原を深く巻き込んでしまっているのに。
生きて行くために彼の一途さを利用しているような罪悪感を感じて、秋葉はひとつ溜息をついた。
「………いいんですよ」
何か気配を感じたのか、梶原がそう呟いた。
その手が秋葉の髪を撫でる。
ほとんど意識は眠った状態なのだろう。
梶原は寝息をたてながら、ゆっくりと髪を撫でた。
「ごめん……」
秋葉は謝罪の言葉を口にする。
再び自分の手のひらを包んだ梶原の指に、冷たい指を絡めて。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ