公安第一課(裏?)

□君が生まれた日の朝に
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『すっごくすっごくたくさんの人がいる中で、一生のうちに関われる人なんて…ほんの一握りなんでしょうけど』
いつだったか、梶原はそう呟いた。
『でも、こうしてあなたと出会って、お互いの人生に関われた事って奇跡的ですよね』
梶原は奇跡という言葉をよく好んで使う。
そもそもこうしてここに生まれて生きていることが、彼にとっては奇跡なのだという。
『生まれてきて良かったなって、一生のうちに一回でも思えたら』
そして綺麗に微笑んで。
『思えたら、いいですよね』
同意を求めるように、俺の目を覗き込んだ。



昨夜も寝苦しい夜だった。
クーラーをつけたまま寝てしまうと翌朝がとんでもなくダルいので除湿にして眠るのだが、最近はタイマーをセットせずに一晩中つけておかなければ暑くて眠れない。
まだ外が明るくならない時間に目覚めていた秋葉は、それでも隣で熟睡する梶原を起こしてしまうのは気の毒で、そのまま動かずにベッドの上にいた。
「う〜……」
仰向けに寝ていた梶原がかすかに声を上げ、寝返りをうって秋葉の方へ向きを変える。
ついでに彼が身体にかけていたタオルケットがばさりと秋葉の身体にかけられた。
明け方は少し肌寒い。
秋葉は身体を少し起こして、丁寧にタオルケットを梶原にかけなおしてやり、梶原の肩を撫で、茶色の髪を撫でる。
テーブルの上に置かれている梶原の携帯は、夜が明けた頃からメール着信を知らせるLEDディスプレイが何度も点滅していた。
梶原はまだ目覚めないまま、秋葉の右肩に甘えるように顔をつける。
秋葉はふと笑んで、梶原の額に自分の額をつけてやる。
それから、すやすやと眠る梶原の寝息を聞きながら指先で頬に触れ、いたずらをするようにその鼻先にそっとキスをした。
恐らくは彼の携帯に朝からメールを送ってくる、その用件は皆一緒だと秋葉は思う。
「誕生日、おめでとう……」


28回目の、君が生まれた日の朝に。

皆に愛される君へ。

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