自動車警ら隊(リクエスト)

□拾い物
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「大坪さん。でもこれは…預かれない……かも?」
「もう、『かも』はいいって」
大坪さんは顔をしかめた。
「これ野生の鴨ですよね?」
「多分…」
問われたルーズリーフも、困ったように俺たちの顔を順番に見つめた。
「ちょっと本署に連絡してみよう」
大坪さんは手元の電話の受話器を取り、短縮の番号を押した。
本署に確認を取っている大坪さんを尻目に、俺たちは紙袋をもう一度覗き込む。
「かわいい」
「マジかわいいですねえ」
口々に言う、頼りない警察官にひとつため息をつき。
「……これ、飼っちゃいけないっすかね」
ルーズリーフはそう言った。
「うーん。野生の鳥類って飼っちゃいけないんじゃなかったかな」
吉田巡査がそう答えている間、俺は、人を見かけで判断しちゃいけないという事を実感していた。
意外と優しいぞ。このルーズリーフ。伊達に8連リングじゃない。
「あのですね」
受話器を置き、大坪さんが切り出す。
「こちらで預かれるのは、飼われている動物だけなんですよ。だから、それはお預かりできませんねえ」
「あー…そうですかあ」
残念そうに、ルーズリーフは肩を落とした。
「どうします?」
預かれない以上、どうするもこうするもないのだが。
元いた場所に置いておくとか言われたら、俺の中で急上昇中のルーズリーフ株が大暴落してしまう。
「じゃ、井の頭公園の池にでも放してみます」
にこり、と笑い、丁寧に頭を下げてルーズリーフは出て行った。
ルーズリーフ株、マックス上昇。
彼が出て行くと、また交番の中は静かになった。
こんな静かな平穏な日も珍しい。
でも、たまにはいいよね。こんな日があっても。
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