公安第一課(裏?)

□浸食
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急激に身体が落下するような感覚に、危うく悲鳴を上げてしまうところだった。
秋葉は目を開けて、ここが自分の部屋であることを確認する。
見慣れた天井を見つめ、息苦しいほどにやかましい鼓動を聞いている。
まだ、あの場所にいるのかと思った。
じわじわと命を削られながら、相模と対峙し続けたあの部屋に。
ゆっくりと視線を動かすと、床の上にでかい影が毛布にくるまり転がっている。
「……またかよ」
秋葉は記憶を手繰る。
『独りにしませんから』
どうせ毎晩見る悪夢は自分を手放しはしないのに。
そんな台詞で安心させておいて。
「自分の部屋に帰れっての……」
秋葉はため息をつきながら呟いて、両手で顔を覆った。
だが。
「………?」
確かに血のにおいを嗅いだ。
おそるおそる両手を見つめて、まただ、と秋葉は思う。
また、この手が血に濡れている。
いつまでも乾かない、怖いほど生々しい感触で。
誰のものかも分からないまま、じわじわと皮膚を通過して染み込んでくる、おぞましい感覚。
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