-戯言-

□ひゞき
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愛していると言った癖に、邪魔になったら捨てるのね。





「人識も、私を捨てる?」

ある時、ソファに寝そべり本を読んでいた七子が唐突にそんなことを言った。


「は?」

余りにもいきなり過ぎて、素っ頓狂な声を上げてしまう。
七子は読んでいた本を閉じ、真剣な眼差しで問うた。

「仮定の話だけれど。
もし、人識が国外や遠方に行かなきゃならなくなったら、人識は、私を、捨てる?」




本当に唐突だ。
いきなりの質問で首を傾げる俺に、七子は苦笑する。


「ごめんごめん。この本を読んだら、少し気になっちゃってさ。
…ある愛し合っている二人がいてね、逢引しては恋慕の情を深めていたの。
けれどある時、男の主が遠方に行くと言うので、男は女を捨ててしまうのよ。
女は男を愛していたから、別れたくなんてなかった。
なのに、男は女を捨てた」



それは、辛かったかもしれない。
それは、悲しかったかもしれない。
それは、苦しかったかもしれない。
それは、切なかったかもしれない。

けれど捨てた。




恋した相手だと言うのに。






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