-戯言-

□零崎くん一家-妹編-
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友達に好きな人が出来たり、恋人が出来たら、友達として祝福してあげたい。

その気持ちは確かにあるのだけれど、その相手が自分の兄である場合、何とも祝福しがたい。
兄は大切な家族だ。
けれど、兄の性格と言うか性癖を加味した場合、考え込んでしまう。





「まだ軋識さんのがましですよう」
ぐったり。
そう形容すべき状態で舞織は呟いた。

「?大将のがましって…何がだ?」
人識が板チョコを口に含みながら、舞織に尋ねた。
舞織は机に突っ伏したまま、人識を下から睨みつける様に見て、一つ溜息を吐いた。

「七子のことですよ」
はあ、と妹を心配する姉のような表情で舞織は言った。

「ああ、兄貴の彼女だっけ?物好きだよな」
人識は他人事故にか、かはは、と楽しそうに笑った。
「双識さんが悪い人じゃないのは重々承知なんですけれど、セクハラとかはナチュラルにするじゃないですか。
七子にセクハラなんてしようものならどうしてくれましょう!軋識さんの釘バット借りてこなくちゃですよ!」

「そこまで考えちゃう心配症というより溺愛し過ぎなお前の脳味噌がどうしましょうだよ」
人識は呆れつつ、ソファにもたれた。
舞織にとって七子は自分が"零崎舞織"になってからも変わらず接してくれる唯一の友達。
その友人が兄の毒牙…じゃなかった付き合っていると知った時は兄をどうしてやろうか考えてしまったものだ。




「ただいま」
「お邪魔します」
七子の遠慮がちな声。
舞織は俊敏に玄関へと向かっていく。
背後から人識の呆れた様な声が聞こえたが、この際気にしないでおく。


「お帰りなさいー、七子大丈夫ですか?双識さんに変なことされませんでしたか?」
舞織は七子を抱き締めながら、母親の様に心配する。
七子と双識は苦笑しながら、大丈夫だよ、と笑った。双識は妹に信用されていないのが少しショックな様だが。



「ご飯食べて行ってくださいよう」
舞織の提案に、七子は困ったような顔をする。
「え、悪いからいいよ、伊織ちゃん」
わたわたする七子の頭を優しく撫でながら、双識は言う。
「まあまあ、せっかくだから、食べていかないかい?」
双識と舞織に言われて、七子はじゃあ、と笑った。






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