-復活-
□MovieTrap
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「ねぇねぇスクー、映画見に行かない?」
「は?」
スクアーロは七子の発言に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「だから、映画見に行こう?映画デート行こうぜ、イェイ」
いや、仮にもマフィア目指している人間が映画…。
まぁ、まだマフィアではないが、マフィアになる為の学校に行っているのだから、彼女もマフィアになる心積もりでいる筈なのに。
彼女はマフィアに向いていない雰囲気を纏っている。
「…映画…まぁいい。何てぇ映画だぁ?」
スクアーロの言葉に七子はうきうきした様子で答えた。
「えっとね、『ヘルニア国物語』っていうんだけど、知らない?
王子が重い椎間板ヘルニアに悩まされながらも、国の為に、民の為に頑張るやつ」
「現実的だなぁおい。そんな映画、夢も希望もねぇだろう」
椎間板ヘルニアな王子ってどんな映画だ。どんだけ現実的なんだ。
まだ不治の病に冒されている、佳人薄命な王子の方がいい。
どっかの国には切り裂き王子がいるって聞くが、そっちの方が椎間板病んでるやつよりかは幾分マシなんじゃあないのか。
そんなスクアーロの言い草に、七子は溜息を吐く。
「馬鹿だねぇ、スクちゃんは。
辛い現実はいつだって辛い現実なんだよ?椎間板なんて相当しんどい現実じゃない。
それと立ち向かいながら、国の為に頑張る王子を我々は陰ながら応援すべきだよ」
と七子はヘルニア国物語について力説しているが、スクアーロには全く興味がない。
応援したいなら勝手にすればいいよ、と言いたいが、不用意にそんなことを言えば、七子がキレそうなので止めておく。
「とにかく、そんな見るからにつまらなさそうな映画には行かねぇぞぉ」
スクアーロは自分の剣を磨きながら、そう答えた。
七子は流石に深く勧誘することはせず、諦めた様子でヘルニア国物語のチラシを見て呟いた。
「んー、分かった。スクアーロが駄目ならザン君かディーノ誘ってみる」
「ちょっと待てぇええ!!
今明らかに可笑しな単語が聞こえたぞぉ」
七子がいの一番に自分を誘ってくれたことも嬉しかったが、それよりもあのザンザスを誘って行こうとする七子に驚愕した。
「ザンザスが行くとでも思ってんのかぁ゙?」
「んー、前に誘ったら快く行ってくれたよ。
『僕のパンダを紹介します』って映画」
誰だ、ザン君て。
流石のザンザスも惚れた女性には優しいようだ。
あとその映画のチョイスもひどい。
スクアーロは脱力したと同時に、焦燥感に駆られた。