-復活-

□慕情の嵐
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「骸くーんっ!」

「また君ですか。て言うか君、学校はどうしたんです。まさかサボリですか」


あー、今日もカッコいい。
上から下までバッチシ良い男オーラがムンムンしてるよ。

ああああああああああああああああああ。
抱き付きたい、頬擦りしたい、愛を囁きたい。



こんなにカッコいい男が他にいるだろうか、いや、いない。


「んーっ、今日も剥製にしたい位、カッコいいね」
「人の話聞いてない上に、発言が物凄く犯罪の一歩手前ですね」

骸は七子の逆セクハラを日常茶飯事、事実そうなのだが、兎も角、まるで普段の日課の如くににこやかに流す。



「七子、朝からウザイ」
千種が酷く面倒臭そうな面持ちで、七子に言う。
「千種……………骸君へのアタック中に声掛けないで下さい。集中力が落ちる」

千種の毒舌に、堪えていない。
そもそも、アタックに集中力なんて必要なのか、どう考えても不必要だろう。

七子は、恋を狩りと履き違えてるんじゃないだろうか。

突っ込むと、どうキレられるか分からないので、敢えて触れないでおこう。




「兎に角、七子、学校ヘ行きなさい。雲雀君にまた怒られますよ。
大体、毎日毎日、隣町の中学校に来てる暇があるなら自分の学校に行きなさい」


「大丈夫、何とかなる。
恭弥は多分恋する少女には優しいから。
だから骸君、付き合おう。

寧ろ、結婚しよう」

「………はい?遂に脳が腐敗しましたか」

薄く微笑みながらも、辛辣な言葉を吐く骸に、普通の女性なら泣く所を七子は全く気にすることなく、逆に肯定した。


「うん、そうかも!
骸君を目の前にすると、私のテンション5割増、私の脳腐敗度4割増、兎に角色々増すからね!

あ、でもまだ16歳になってないから、今はまだ婚約だね。

大丈夫だよ、骸君。幸せにするから、どうか私を六道七子にして下さい。苗字骸でもいいけど!」


「ちょ、落ち着きましょう。
何処をどうやったら、そう言うぶっ飛んだ思考に繋がるんですか!」


ずいずいとにじり寄る七子に、じりじりと逃げようとする骸。







「骸君、大好きなんだよ」
急にしおらしくなる七子。
「骸君、モテるから、他の女の子にとられたくなくて…ごめんね、やっぱり迷惑だったよね…」
「七子…」

骸と七子の間に青春絵図な空気が流れる。



「騙されないで下さい、骸様」
千種が骸の背後からそう声を掛ける。

「千種ー!何の恨みがあって私の恋愛成就を妨げるの!」
七子が千種の胸ぐらを掴む。


「俺は平穏の為なら修羅にもなる」
「何カッコいいこと言ってんの」

骸を放り、千種と七子は言い合いを始める。



「何やってんの、七子」
「……………なぜここに恭弥がいるの。話はそれからだ」

黒曜中の校門前だと言うのにも関わらず、並盛中の秩序こと、雲雀恭弥がそこにいた。

「七子がいるって聞いてね。
ほら、帰るよ」


雲雀は七子の襟元を掴んで引き摺って行く。


「ちょ、こら、女の子を引き摺るってどういう了見よ。

このサディストバード!あ、ごめんなさい殴らないで痛い!



骸君、また来るからね!」

ぶんぶんと骸に向かって手を振り、七子は嵐の様に去って行った。




「全く、毎日のことながら迷惑極まりないですね」
そう苦笑と共に、歩を進める骸。
千種も犬も、骸に付いて歩き始める。
千種は、眼鏡を直すと同時に溜息を一つ吐いた。



迷惑、だなんて本当は思ってもいないだろうに。
骸は勿論、七子も犬も気付いてはいないのだろうが、七子といる時の骸は、楽しそうに見える。
きっと、気付かぬ内に芽生える慕情と言う奴だ。
ありがちな恋愛の始まり。
けれど最も厄介な恋愛の始まりでもある。



気付くまでにはどれ程の。
気付く頃にはどの程まで。
想いは募っていることか。

千種は、誰にも聞こえない小さな溜息を一つ、吐いた。




厄介な嵐が連れて来た厄介なモノ
(めんどいことになりそう)





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