-other-

□世界選択
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「世界が選べていたら、どうしていた?」



だなんて、有りもしないことを。
有り得ていても、きっとどうしようもないようなことを。

仮定すらない、ただの思い付きのような言葉を名無子は佐助に投げ掛けた。





貴方は、覚えているだろうか。



ずっと昔。
ずっとずっと、昔の話。



君と私が、血と闇に塗れ、疲れ切っていたあの頃。
心の支えは、主が天下を獲って平和になった世のことばかりで。


忍が戦いを取り上げられたら、何も残らないのに。


それでも平和を望んでいたのは、やっぱり戦いに疲れていたからかな。




「俺様は、今の状態で満足だね」
と、佐助は言う。


『今』はさ、戦い、なんてないし、平和に毎日過ごせる。
他愛もないことで笑って、喧嘩して、楽しんで、心配なんて、旦那の昼飯くらいのことだよ」

「………おかん、だね」
「名無子、それ言わないでくんない」

渋い顔をして佐助が苦笑した。
本当に幸せだと思う。

過去の日々を忘れることなんてないけど。
過去の日々を忘れることなんてないから。



この幸せを、噛み締められる。
この幸せが、至上のモノだと理解することができる。



「幸せ、ね。佐助」
「ん、そうだねぇ。名無子。」



佐助も幸せを噛み締めているようで、あの頃からは想像もできないくらいに、とてもとても、穏やかに、幸せそうに微笑んだ。




君は覚えているだろうか。


俺が今、幸せなのは。
戦いがなく、平和で穏やかな日々を過ごせているというのもあるけれど。


君が俺の傍にいるからだ。


君は、昔、ずっとずっと昔、俺を置いて先に逝ってしまったから。

君は覚えていないかもしれない。
別に、そんなことはどうだっていい。
この世では、嫌ってくらい、一緒にいたいと思う。

この幸せな世界で共に。




幸せな世界で君と永久にいることが


(佐助?)
(んー。ねぇ、名無子、高校卒業したら結婚しない?)
(…………大学卒業まで待ってよ)
(ちぇ)
(あ、婚約ならいいんじゃない)
(それは盲点だったね。…ね、名無子、俺と結婚を前提にお付き合いして下さい)
(はい、喜んで)







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