-other-

□いざ料理
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「こりゃ酷い」





武田邸―。
戦国の世とは思えない程に、穏やかな日々が続いている。

屋敷の台所で起こっている混沌など、素知らぬように鳥が鳴いた。

台所から漂う異臭と奇怪な音を訝しんだ武田の忍頭、猿飛佐助は台所の有様を見て冒頭のような科白を吐いた訳である。



「さ…佐助ぇえええ」



と涙目になりながら武田に居候中の娘、名無子は佐助に助けを求めた。



「どうしたらこんな混沌になるかね」
佐助はただ呆れたように言う他なかった。


台所は焦げ臭いやら腐臭がするやら卵は割れて中身が出てるやら、野菜の切れ端らしき物は散乱し、とにかく酷い有様だ。



「名無子って料理、下手なんだね。」
苦笑を浮かべて佐助は言う。


名無子は申し訳なさそうに頭を垂れる。


「ももももも…申し訳…ありません」

平身低頭で謝る名無子に、佐助は片付け始める。
名無子も慌てて片付ける。


「名無子がいきなり料理作るだなんて珍しいね」
佐助の言葉に名無子は苦笑しながら答えた。
「いやあ、ちょっと、甘味を作ろうかとね?」

歯切れの悪い名無子の答えに引っ掛かりながらも提案する。

「俺様が作ろっか?旦那の世話で慣れてるし」



佐助の主は相当甘味が好きで、一日20本は食べる。
無論これは佐助が制した上での本数であって、制約がなければ幾らでも食べてしまうことだろう。
とまあ主が甘味好きなせいで自ずと団子を作るのが上手くなってしまうと言う訳だ。



いつもなら喜んで頼む名無子だが、今日はそれはそれは物凄い勢いでそれを辞した。


「いいっ。大丈夫」
「何で?」
純粋に疑問付を浮かべる佐助に、名無子はしどろもどろになる。

歯切れの悪い名無子の相手に疲れたのか、佐助は名無子の頬を抓りながら言う。


「名無子?俺様忙しいんだよね?」


「痛い痛い、あーもう!
手作りで佐助に喜んでもらおうと思ったんだよ」

自分が壊滅的に不器用なのをさらっとすっかり忘れてな!


名無子が噛み付くように言って、また片付けに戻る。
佐助は名無子の言葉に嬉しくなって、へらりと笑った。







平和で長閑なある一日

(佐助)
(何ー?)
(私の為に毎日団子を作ってくれ)
(逆求婚?)






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