-other-

□春は過ぎ、夏が覆う
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放課後。
誰もいない屋上。
空では雲が緩やかに、柔らかに流れていく。
空には鳥が高らかに、いなないて飛んでいく。




「気持ちいいねぇ。」


やけに空が高い。
やけに雲が厚い。
ああ、春とも夏とも言えぬ季節が去ってゆくのだ。



「晋、ちゃん?」

何も言わない高杉を心配したのか、名無子が怪訝そうに顔を覗き込む。


「具合でも悪い?」
「な訳ねーだろ。
ったく、出欠の心配に体の心配、お前は俺の母親か。」
苦笑混じりに高杉は体を起こし、名無子の頬に手を添えた。



「うん。母親的存在だよ。」

ふふ、と少し悪戯っぽく笑う彼女。




高杉は頬に添えていた手で、名無子の髪を愛おしそうにすいた。



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