Novel

□かくれんぼ
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夏の暑い日差しが半助の部屋を照らしている。
少しばかり眩しいが、テストの採点という作業をするのに不都合はない。

もっとも日差しより半助の作業を妨害するものがあるからかもしれない。





「もういいですか土井先生?」


利吉が痺れを切らした声で言った。
それに対し半助は、

「もうちょっと、皆バツが多いからね」

やれやれといった感じに返した。


「私が来たらいつも貴方は採点をしている気がします」
「そうだったかな?」
「そうです…土井先生はその…」


あの、その、と繰り返し、利吉は頬を赤く染めた。
半助は利吉を見ずひたすらテスト用紙にバツ印をつけている。


「土井先生っ!」
「なんだい?」

利吉が少し声を張って名前を呼んでも半助は作業を止めない。


「先生は…あなたは思ってはくれないのですか?」

利吉は下を向き、床を見つめた。
半助は何のことかな、と思いながら採点のラストスパートにかる。

「先生は…」
利吉の声は少し震えていた。

「もっと私と…」

今風が吹いたら風が声をさらっていってしまうのではないか、と思うくらい利吉の声は弱々しい。

「もっと触れたいとは思わないのですか?」


利吉は林檎のような顔で半助の曲がった背中を見た。
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