Novel

□空気よりも何よりも
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古い木の臭いがする。
学園にある古い倉庫だからしかたがない。

しかし、長時間その臭いの中にいなければいけないのは何とも嫌である。

その上捕まっているとなれば嫌気はさらにます。

「まったく…僕が何をしたんだ」

出茂は体を縄でぐるぐる何十にも巻かれていた。




縄抜けをしてもよかったのだが、目の前に張本人がいるのだ、抜けて逃げたところでどこまでも追いかけてくるであろう。

そう思い出茂はとりあえずこうされなければならない理由を聞こうと相手を睨んだ。

「おいどうして僕はこんな目にあわなくてはいけない…聞いているのか小松田秀作」
「ほえ?あ、おはようございます出茂鹿さん」

呑気に小松田は貸出表をチエックしていた。

「おはようございます、じゃない。いったいどういうつもりだと聞いているんだ」
「ああ、そんなことですか」
「そんなことではない!こんなぐるぐる縄を巻かれ、意味がまったくわからない!怨みでもあるのか!」

かわらず呑気に貸出表を付けている小松田に出茂はついに声を張り上げた。
驚いた小松田はうっかり貸出表を落としてしまった。
古い倉庫にカツーンと虚しく響いた。

「怨み…?」
「そうだ!でなければ縛ってこんなところに監禁まがいなことしないだろ普通」
「……僕昨日夢をみたんです。学園が襲われて皆が大切な物を持って逃げようとする夢を」

小松田は眉を下げ、哀しそうに、

「僕はそうなった時に皆が混乱しないように皆の大切な物を集める訓練をしようと思ったんです」

小松田はいっきに言うと酸素が足りなくなったのか、大きく息を吸ってむせた。

「夢の話はいい!なぜ僕がここにいるかを教えてくれ!」
「ですからぁ〜大切なー」
「それはもういい…」

出茂はうなだれた。
人と話がしたいなんて思ったのは久しぶりだった。

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