Novel

□言えない四文字
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年上で年下の恋人は私のことをこうやって呼ぶ。

久々知兵助






兵助は悩んでいた。
もちろん恋人に呼ばれるのだ嫌なわけでわない。

しかし、やはり恋人、下の名前で呼んでもいいのではないであろうか。

下の名前だから深く親しくなれる、というわけではないがやはり自分の名前は呼んでほしい。


「あーなんでだよ…わかんない」

兵助は火薬庫の在庫チェックをしている。
一年と二年は今日の委員会は無しにしてある。
背が低くて高い棚が見れないからである。

「答がない問題なんて昔から解いてきたから簡単だと思ったけど……」

恋なんて専門外である。

兵助はチェックを終え、火薬庫から出る準備をしていた。

「くくちへーすけくぅん」
「あ?」

戸のほうから悩みの種のタカ丸の声が聞こえた。

「どうした、土井先生いなかったのか?」

兵助はタカ丸に顧問である土井を探させていた。
結局みつからなかったらしく、タカ丸は頭をかくんと下に下げた。

「んーまあいいやとりあえず今日の委員会は終わり」
「わーい。あ、あのねくくちへーすけくんこれ一緒に食べよ?滝夜叉丸くんから貰ったの」

兵助は固まった。
自分はフルネームなのに同じ学年(歳は二個程ちがうが)の滝夜叉丸を名前で呼んでいる。


「くくちへーすけくん?」

「なあ、タカ丸その呼び方止めてくれないか?」
「えっ?あ、ごめんなさいっ…久々知先輩」

兵助はため息をついた。

「違う。名前で呼べってこと」
「あ、う、名前?」
「あ?嫌、なのか?」

兵助は不安になってくる。
なぜタカ丸は拒むのであろう。
成績優秀である兵助にもわからなかった。
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