Novel

□春風のラプソディ
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「ねえ雷蔵」

春風が、日差とダンスをするように部屋に舞い込む昼下がり。
兵助は雷蔵の部屋へ遊びに来ていた。

「なんだい兵助?豆腐のことならお断りだよ」

ふふ、と雷蔵はやわらかく微笑む。


「そんなんではないのだ…あの…じつは…」

兵助は肩をすくめて俯いた。耳は林檎のように赤くなっていた。


「…もしかして、はちと何かあった?」

「実はさ…はちと…口吸いがしたいんだっ!!」


五年長屋、いや、学園中に響いたのではないかと思うくらいの大声だった。

「兵…助、声デカイって」
「あ、ごめん…」

兵助は顔を上げ、すぐまた下げた。
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