GS以外の小説

□DARK HALF(狩人×月神)
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俺は、海洋神の血と人の血を受け、半神半人として生を与えられた。
が、世界の何処にも居場所を見付けられなかった。

ずっと自分が嫌いだった。

神に成れぬなら英雄に成ろうと志してみたりもした。
然し命題すらもオリュンポスは、与えなかった。

神は、俺を気紛れから造っただけ。

人は、俺の力を恐れ忌み嫌う。
神は、俺の血を嘲笑い嫌う。


(世の中等壊れて終えば良い。)


(神も人も滅びて終え。)


何時しか其う願い、其う呪う様に為って居た。
己の存在は、悪だと暴れ壊す為に命を長らえて来た。

其んな俺を根底から浄化したのは、月の女神。
透明な優しさの御陰で悪夢から抜け出す事が出来た。

天空から三日月の強い加護を受け、命を賭けて願う。

此れからは、常に付き従い其の弓に成る。
守る楯に成る。

だからあの憂いの影へ触れて居たいと。


(無謀で構わない。)


(妥協等出来ない。)


其れだけが、此れからの俺が生きて行く糧。
望む事が、己の存在理由。

こんな俺を導き、産まれる前に波にもがれた筈の翼迄貴女は、与えてくれたのだから………。


聖闘士星矢並行次元小説


月神の恋 神代編Scene.4


DARK HALF〜TOUCH YOUR DARKNESS〜


狩人Side



俺が月の天闘士候補生に成り、3ヶ月が過ぎた。

「こら、オリオン!余所見をするな!!」

今は、アルテミスの天闘士の中でも上級の月衛士と称されるカリストにしごかれ、カノン島での生活を送って居る。

「殴らずとも良いだろうが!」

「戯け!例え姫神様が我等の御側を通られようとも、気を散らす物では無いわっ!!」

「大体、貴様は、女の癖に馬鹿力過ぎるぞ!」

「何だとぉ〜……。」

「まぁまぁ、二人共。今日はもう其の辺にして休んで下さい。」

月の結界が濃厚に張られた聖域で夜毎修練を重ね、オリュンポス随一の聖少女の側へ支える日々は、想像して居たより悪く無かった。

「カリスト、子供を持つ身で有る貴女を召喚してしまい、ごめんなさいね。」

「そんな……頭をあげて下さい。姫神様の御加護で私達親子は、生きて居られるのです。あの時助けて戴けなければヘラ様にどのような罰を与えられたか………。」

「いいえ。もっと早く気付いて居たら此んな事には、為らずに済んだのに……。貴女は、私の所以で酷い思いをしたのですから……。赦して下さい。」

逸話を知る限りアルテミスとは、冷たい女だと思って居た。
だが意外にも実際の姿は、違った。

妊娠したから追い出したと地上で噂されて居たニンフは、月神の機転に助けられたらしく此うして天闘士として生きて居る。
裸体を見たとして殺された筈の男や贄にされた王女もまた然りだ。

誰に対しても降り注ぐ月光と同じ平等さで接し、眠りに堕ちる時の優しさと均一の慈愛で愛す。
あれは、其んな女だった。

「オリオン、貴方も1日頑張りましたね。御疲れ様でした。」

優麗な月の魔力に毒されたのかも知れない。

否、違う。
敬愛しても可笑しくない程、彼女は立派だったので有る。

何せ今から俺達を護り、子供や民を護り、木々や獣を護る為に祈りを込めて月の運行をするのだ。

「おい、一人で出歩くつもりか。」

「平気です。此う見えても私は、狩りの女神ですから。だから貴方は、安心して眠って下さい。」

「馬鹿言うな。俺に簡単に押し倒される位、お前はか弱い女だろうが。」

我が身を削り何をも惜しまず献身的に生きる姿を、何時しか按じて後を追い、付き従う様に為ったのも必然と言う物だろう。

「……解りました。では、好きになさい。」

森を抜け、反対側の砂浜へ出る。
其処から岩場を歩き岬の突端にたどり着いた。

複数の羽を広げ、静かに流るる賛歌。
光でも影でも無い清らかな小宇宙が漂い夜を充たす。


(嘗て俺が、此んなに女を美しいと思った事が有っただろうか。)


少女神の声を受けて波が銀の鎖に変わる。
海から還された加護が結界をより強固にした。

美しい旋律は、舞い落ちる羽と共に地底に迄染み渡る。
闇へ射す一筋の光明を称賛する様に地底の冥界からも地の理が授けられた。

然し誰も気付かないのだろうか?
時々聖なる唄に混ざる彼女の慟哭に。


(何が其れ程、お前を紅涙させる?)


白い翼が身を捩るみたく揺れた。
か細い指が三日月の杖を確り握ると、祈りが一層神聖さを増す。


(孤高さが彼女を苦しめるのか……。)


銀の長い髪が更々とオレンジの花の香を含ませ靡く。
月を写した夜の海と同じ瞳が、朧に丸く為った。

余りに存在感が儚くて、眼前の何もかもが恐ろしく見える。
まるで全てが今にも消え失せて終いそうで、不安から視線を反らせなかった。

「………オリオン、大丈夫ですか?」

何時の間に歌い終わったのか、アリステが放心状態の俺を心配そうに見上げて居る。

「あ、ああ。」

「だから休みなさいと言ったのに……。あれ程激しい修練をしたのですから疲れて居るのでししょう。」

「アルテミス、お前は、一体……。」

「さぁ、もう眠りなさい。貴方へも等しく夜が安らかで在ります様に。」

女神の言葉は、何時も通り愛に溢れて居る。
が、其の胸へ踏み込ませぬ為の突き放す響きも持って居た。

「………また、明日。」

「また、明日。」

近付いた途端に遠ざかる。
其んな距離感に脱力し彼女の側を離れると自身の寝屋へと戻ったのだった。

☆ミ

翌日、アルテミスは会議の為にイーピゲネイア達と島を離れて不在だった。

「オリオン確り働け!姫神様が居ないからと言ってぼさっとするな。」

「五月蝿い!働いてるわ、アクタイオン!!」

ムーサ等が来るから宴の為に狩りをして欲しいと頼まれた俺は、先輩風を吹かす元人間の猟師だった天闘士と一緒に森に居る。

「良し、もう良いだろう。」

「何故だ?まだまだ狩れるぞ。」

「馬鹿かお前は。」

「馬鹿とは何だっ!!」

正直、此奴が嫌いな俺は、偉そうに言われて相手を睨み付けた。

「………良いか、聞け。狩りとは、獲物を捕れるだけ捕れば良いと言う物では無い。必要な分だけ捕るから猟場が一定に保たれるんだぞ。」

「ほほう。で?」

「で?では無い!大体狩り過ぎれば姫神様が哀しまれるのが解らないのかよっ!!全く……お前と居ると疲れて来るぜ………。」

溜め息を付いてアクタイオンは、地面に腰を降ろす。
隣に俺も座り呆れられた次いでに質問してみた。

「貴様、何で天闘士に成ったんだ?」

「おっ、聞きたいか?て言ってもまぁ、大体知ってるだろうが………。俺は、人間だった頃普通のしがない猟師だったんだよ。」

彼の話は、此うだった。

其の日の糧を求め森に入ったら、茂みから音がしたので獲物かと覗いてみたらしい。
すると運悪く月神のニンフ達が禊をしており、汚されたと大騒ぎに為ってしまった。

少女神が慌てて駆け付け、其の姿の神々しさに畏れ慄いた彼は、必死に非礼を詫びた。
其れで彼女は、赦した。
だがニンフ達の怒りは鎮まらず

『私達の裸体を見たと言うことは、アリステの裸を見たも同じ。』

等と憤慨して居るのを偶々太陽の車に乗って側を走って居た弟神アポロンが聞き付けて、有無を言わさず彼を殺そうとしたのだと言う。
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