GS以外の小説

□nostalgia(月神→太陽神)
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私は、どの位生きたのだろう?
此の身は、何故神として産まれたのか?

我が名は、アルテミス。
大地の意志を背負う者で在る輝かしい双子の片割れ。
と、同時に神を屠る者。

私は最初から呪われて居る。
其してずっと自分が呪わしい。

生まれながらの足枷に苦しむ、生粋の咎人だった。

聖闘士星矢並行次元小説


月神の恋 神代編Scene.1


nostalgia


月神Side


あれは、遠い神代の頃。
タルゲリオンの月の7日、オルテュギアー島。
義母ヘラの嫉妬により太陽の当たらぬ状況で私は、母レト、父ゼウスの間に誕生した。

難産で苦しむ母を救う為。
父から受け継いだ神の力で急成長して、其の御産を助けた。

場所をデロス島に移し、翌日漸く取り上げたのは双子の弟だった。

「やあ、姉さん現世で逢うのは初めてだね。取り出してくれて有難う。」

「……身体は平気なの?アポロン。」

「此の通り元気だよ。心配掛けてごめんね、アルテミス。」

母の腕に抱かれた赤子なのに、我等には話せる位の知能が在った。

神故の異常な状況。
其れでも世界は金色に輝き、全ての物が私達を祝福してくれた。

(幸せに包まれたあの時が、思えば1番幸せだったのかも知れないな。)

程無くして私達は5歳位に成長し、父に逢う為オリュンポスへ向かった。

「楽しみだね。」

「其うね。でも、はしゃぎ過ぎては駄目よ。」

其処で私達は、神として無条件に迎えられる筈だった。
身体が大きくなってもまだまだ無邪気で、何もかも信じて居た幼い私達は、疑う事等知らなかったのだ。

此の後迄は。

☆彡


ゼウスの神殿は大きく豪華絢爛で、私達は少し怖じけつつ中へ入る。

「美しく輝かしい我が子達よ、良く来たな。」

大神は威厳に溢れ、其の血脈を次いで居るんだと思うと2人共誇りに感じて、嬉しく為った。

「さぁ、此方へおいで。」

「お父様。」

「父上、お逢いしとうございました。」

感動覚めらやぬ侭、膝へ上げられネクタルを貰う。
が、喜べたのは束の間で

「可愛い我が子よ、お前達を神にしてやる事は出来ない。だが、出来る限りの事はしてやろう。」

父神から告げられたのは、抱いて来た夢を打ち砕く存在の否定だった。

「お父様、どうしてなの?」

「父上、何故です。」

不意打ちの哀しみに傷付いて居る私達の前に

「母なるガイアの神威を背負う、憐れな双子よ。」

叔父で有るハーデスと

「其れは其方達が此の世界を破壊するからだ。」

ポセイドンが姿を見せ、意味深げに言葉を続ける。

「曾祖母様が一体……。」

「我等はティタノマキアの際、勝つ為の神託をガイアから授かった。其の際、決められし交わりを行うと彼女と確約した。結果、今回産まれたのがどの神をも凌ぐ御前達だ。だが其れは、我々がギガスをタルタロスに閉じ込め続ける故に受ける呪いでも有る。」

「其方等の神託は最も輝ける神と成るが、存在が完全に対となる者だ。其の存在は、天と地、光りと闇。ガイアによると表裏一体の双子神が結ばれ、禁忌から今世が再び混沌に帰すと言う。」

「ギガントマキアが差し迫る今、人手は欲しい所だが、故に二人を神にしてやれんのだ。アルテミス、アポロン…解ってくれ。」

私は、其の時初めて知ったのだ。
希望等簡単に絶望へ変わる。
真実は残忍だと。

きっと弟も同じ気持ちだったのだろう。
固く繋いだ手の熱さと、今にも泣き出しそうな気配で伝わって来た。

「言いたい事は解りました。ですが、突然の御話で両方混乱しておりますので考える時間を下さい。」

「……仕方無かろう。」

「急がずとも、まだ時間は有る。」

「うむ、では部屋を用意させよう。ゆっくり休むと良い。」

話の整理をしたいと明日に答えを引き延ばした物の、光明は、見えないだろうと解って居た。

(其れでも、弟だけは守りたいのです。)

私の気持ちは、其れでも唯アポロンを按じる気持ちで一杯で、其の気持ちが何かなんて、到底知る由も無かった。

★彡


ぐるぐると思考が同箇所を回り、眠れぬ私達は互いを労り合いながら話し合って居た。

「どうしたら良いんだろう…姉さん、僕達は、生まれてはいけない存在だったのかな……。」

「其んな事在る筈ないわ。」

「僕が死ねば済むなら、死ぬよ?」

「……其れは、解決じゃ無いでしょう?」

「でもっ!!」

「神の器で産まれ人へ堕とされる屈辱は、私一人が受ければ良い。其れでも駄目なら私が死ぬから。」
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