GS以外の小説

□Unlearned Man(太陽神→月神)
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私は輝かしい太陽。
完璧な容姿と完全な力を持つ者。
故に世界から日々、祝福されて居る。

だが其んな私にも、手に入らぬ物が有った。
其れは…恋だ。

天上で冷淡に輝く麗しき月。
我が半身たる姉上。
太古から変わらぬ私の想い人は、彼女一人。

然し何度伝えようとも、相手は受け入れ様とせず今日も手酷く拒絶され、落胆し滅入った気分の侭神殿に戻る。

白亜の建物の中。
飽きもせず捧げられる沢山の賛辞達。
称賛の声は今日も此の聖域に届く。

が、決して憂鬱は消える事等無い。
其して、誰も気付きはしないのだ。
金鍍金で出来た出来損無いの太陽神……。
此のアポロンの本質に。


聖闘士星矢並行次元小説


月神の恋 神代編Scene.2


Unlearned Man


太陽神Side



冴えざえとした夜。
私は、自身の神殿で日中の事象を思い出して居た。

(今日も彼女は、私を拒絶した。)

聡い姉上は御存知だろうか?
私は、決して神等に成りたかった訳では無い事を。

(全ては貴女を喜ばす為にした事だった……。)

唯、2人で居られるなら其れだけで良いと思う此の心を。

(其れでも血肉を別けた私より、父が大切か?アテナが大事か?)

パルナッソス山の麓に位置するデルフォイを手に入れる迄に伸し上がった今、我が庇護下に有れば苦労等せずに済むと言うのに……。
幾ら説得しようが、森に逃げ込み男の様な暮らしをして居る聖処女カリステは、一向に対の神殿へ戻ろうとはしなかった。

「……難しい顔をなさってどうしましたの?」

当て付けがましくニンフと快楽を共にした後。
うさを忘れる為の行為中に思案する事では無いのだが、ああ迄避けられると流石の私でも気に病んでしまうらしい。

「お前の美しい顔を見て居たら、寝るのが惜しくなっただけだ。」

面倒な事を回避する為に軽々しく口を付いた嘘。
而して詭弁も相手の虚栄心を充たすには、十分だった様だ。
先程迄、隣で寝息を立てて居た筈の愛娼は

「ふふっ。」

好色な唇を歪ませると此方腕を絡め

「もう一度、貴方の御加護を戴いても宜しくて?」

再度なまめかしい肢体を預けて来る。

(此れとて退屈凌ぎの遊戯。)

愛しき姉上に似た面立ちに、起こした気まぐれに過ぎぬのだ。

(見えて居るか?純潔の女神よ。)

月光が柱を摺り抜け、寝台に迄差し込む。
きっと、彼女の操る銀の車が近くを通って居るのだろう。

凍る様に冷たい視線を感じながら、白い谷間に顔を埋め柔肌を貪る。
我が下で、与える刺激に喘ぐ女の姿が酷く醜く眼に映った。

(例え、叶わぬ恋だとしても……。浅ましい想いを消せはしないのだから此の程度の当て付け位は良かろう。)

実情、他にうさを晴らす術を知らぬのだ。
紛い物を見付けては、愛する少女神に擦り代え、私は日々長い闇夜を淫らに過ごすだけだった。

☆彡


翌朝

「アポロン様、客人が来ております。」

何時も乍ら其れは、厄災の様に突然訪れる。

「……通せ。」

良く有る事だが経験上、此う言う時の訪問者は、ろくな者では無い。
大神ゼウスの勅使か

『アポロン、久し振りだな。』

「……地母神ガイア、本日は何用です?」

シビュラの口を使う初代神託者と相場が決まって居るからだ。

『其う煙たがる物では無い。絶対神託を授けに来たのだ。』

「御覧の通り、私は聖務に忙しいのですが。」

『私に憎まれ口を叩くとは、良い度胸だな。誰の加護を受けて今が有ると思うておる。』

父に始めて逢った後。
私は神と成るのと引き換えに、姉と引き離されテミスに預けられる事と成った。

其処で知識を有し、優しい矢の力を公使する毎日。
何時しか私は、オリュンポスの意向を背負い言われる侭に働く傀儡と成って行った。

"我が名はガイア。輝かしい曾孫よ、其方に我が庇護と加護を授けよう。"

併し、不意に強力な後見神が現れ神託を受ける様に為る。
以来、様々な者の身体を借りて曾祖母は神託を下しに来る様に成った。

確かに其の御蔭で現在、12神に入る迄に成れたのは、事実だ。
だが、どちらにせよ彼女もまた誰かを殺せと言うばかりで、相変わらず道化で有る事には変わり無い。

「とは言え、感謝せぬと初めから言って居る筈です。」

『……可愛いげの無い奴だ。』
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