「用語集」

□現代思想哲学用語集・第2版
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▼さ

▽さいあくさいりょうかきじゅん[最悪最良化基準]
 選択の基準を考えるにあたって,最悪の場合に発生する結果が最もましになるような選択の仕方をする場合。
(ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」5頁)

▽さいしょうこっかろん[最小国家論]
 国家の正当な役割を国防・警察・司法に限定する夜警国家的な立場。
 ノージックは、その目的が暴力・盗み・詐欺からの保護,契約の執行等に限定されている国家とした。
 ドイツの社会主義運動家フェルディナンド・ラッサールからは,「夜警国家」と呼んで非難された。
 国家の目的について,更に社会福祉などを含めるものをノージックは,「拡張国家」と呼んだ。
R.ノージック、アイン・ランド。
(ノージック「アナーキー・国家・ユートピア上」序,森村進編著「リバタリアニズム読本」24頁、田中成明「法理学講義」)

▽さいぜんさいりょうかきじゅん[最善最良化基準]
 選択の基準を考えるにあたって,物事の結果がどうあんるかについての最も楽観的な過程を推論の基礎に置く考え方。
(ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」6頁)

▽さいにん[再認]
 過去の出来事を思い出すにあたり,尋ねる側の方から「Xということがあったか?」と過去の出来事について尋ねて思い出す場合。
 心理学上の3つの想起のあり方のうちの1つ。

▽さどうきおく[作動記憶]
 複数の情報を意識的に動じ処理する短期記憶の機能。

▽さぴあ=うぉーふかせつ[サピア=ウォーフ仮説]
 言語の構造により,言語ごとにその言語を使う人たちの「考え方」や「世界の認識の仕方」が異なるという仮説(高田明典「世界をよくする現代思想入門」56頁)

▽さぷらいさいど[サプライサイド(Supply-side)]
供給重視。経済理論の一つ。税率を低くすることで,景気が上昇し税収が増えるという考え方。
(副島隆彦「世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち」23頁〜24頁)

▽さよく[左翼]
 改革派、革新派。
 フランス議会で改革派が議場左側に陣取っていたことに由来する。 
 日本では、特に、マルクス主義的な社会主義者、または、その共感者を言っていたが、ソビエト連邦崩壊後は、マルクス主義の賛同者も(表向き)ほとんどいなくなった。
 現在では、天皇制批判を含みうる権力批判を好む個人又は集団のことをいう。なお、本来的な右翼民族主義者(街宣のうるさい似非右翼ではない)の発想は、天皇制を維持するか否かという点では、左翼と変わらない(警備研究会「極左暴力集団・右翼101問」)。「天皇制批判を」と入れているのはその趣旨である。
では、「批判を含む」ではなく、「含みうる」としているのは、なぜか。
 それは、左翼の典型である日本共産党の天皇制に対する距離のとり方にある。日本共産党は、当然、天皇制に対しては、距離を置き、元々の綱領では、これを否認していた。しかし、これを一般市民に対して、強く主張してこなかった。太平洋戦争前からそのアピールはしていなかった。その理由は、日本における天皇制の支持の高さにある。定期的に天皇制の支持については政府による世論調査が行われており、一番下がったときでも、70パーセント台、平均80パーセント台であることから、市民を動員する上で、その批判を前面に出しがたいという事情があった。しかも、近時綱領が改正され「天皇制を当面のところ容認する」ということになった。
このような複雑な事情があり、「含みうる」という含みのある表現が妥当であると考えた次第である。
 権力批判は、常に正当性の余地があるが、他方で、「批判」にとどまり、「廃止」、「否認」まで主張し得ないことにこの立場の弱さがある。警察や社会保障制度等について批判するとはいえ、警察を廃止して、個々人が自分で自分の身を守る社会に移行するとか、社会保障制度を廃止して、個々人がお互いに直接助け合う制度への移行までの主張はしえない。

▽さよくににーちぇ[左翼ニーチェ]
 ニーチェが西欧理性の裏切りと欺瞞を告発したなどという観点から,反体制的な思想を基礎づけるものとしてニーチェを捉える立場のこと。
 ニーチェは,差別を肯定する言説から,権力国家や保守思想を基礎づけるものと見られることが一般的であり,実際,ナチスの思想を基礎づけもした。
 しかし,他方で,反体制的な思想に対しても影響を与え,これが一般的に「左翼ニーチェ」と呼ばれる。
 第二次世界大戦の末期,イタリア人のニーチェ全集の編纂者であるコリ及びモンティナリは,イタリアを事実上占領するナチスに対する抵抗運動の中でニーチェを読み,また,カミュも,レジスタンス運動の中でニーチェを読んだという。
 また,アラン・ブルームは,「アメリカンマインドの終焉」において,左翼を助長するものとして,サルトル,カミュ,カフカ,ドストエフスキー,ハイデガーと並んでニーチェを挙げると共に,「左翼のニーチェ主義化,もしくは,ニーチェ主義の左翼化」として一章を設けている。
(三島憲一「ニーチェ」今村仁司他「現代思想の源流」99頁,アラン・ブルーム「アメリカンマインドの終焉」239頁)

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