「日誌撰集」

□哲学の価値
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(2)原著者による誤りの自認

 また,いったん出版した著作の内容をその著作者自身が否定する例も間違いではありません。
 その典型がハイデガーの「存在と時間」でしょう。木田元「ハイデガーと20世紀の運命」・木田元編『知の攻略思想読本3ハイデガー』6頁からによると

“ハイデガーが一九四一年になってからでさえ[中略],「自分は今でも〈存在と時間〉を乗り越えて前進したりはしていない」と主張し,ただしそのばあい,「著作としての『存在と時間』と「省察のタイトルとしての〈存在と時間〉」は区別しなければならないのであり,自分がいま言っているのは後者のことなのだが,と但し書を付けくわえていることである。つまり,彼は『存在と時間』という著作の失敗は認める。”

 そうすると,ある種の著作については,そもそも理解が出来ないし,理解出来たらおかしいということになります。

 そして,外国語の文献については,縷々述べてきた翻訳の問題も重なるのです。
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