「日誌撰集」

□哲学の価値
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(2)誤訳

 議論として有名なものは,書名も有名なクーン「科学革命の構造」の翻訳(中山茂)です。

 内田惚七「科学哲学入門」はその翻訳に疑問があるとします。
 
 内井惣七「科学哲学入門」268頁は,「この訳は信頼性に乏しいので原典を併せて参照すること。」としている。因みに,同じ頁には,常石敬一訳のトマス・クーン「コペルニクス革命」も「この訳は信頼性に乏しいので原典を併せて参照すること」とされています。
 
 個人的に1番傑作(失礼)だと思っているのが,ポール・フルキエの「哲学講義4巻」の翻訳です。

 現在は「ちくま学芸文庫」の一巻となっていますが,元々は別の版型で出版されたものでした。
 その最初の版についての翻訳者のコメント。

「本巻初版においては,手違いによって最終校での訳稿手直しが生かされずに刊行された」(ポール・フルキエ著,支倉崇晴・広田正義「哲学講義4」277頁)

 では,前のものの訳は・・?
 一応,訳者としてはベストを尽くしたけれど,編集過程での誤りだから,赤裸々に語ったのでしょうが,やはり読む方としては……。
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