「日誌撰集」
□「私的芸術論」
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3 個性的であることの凡庸さ
一体「個性」があるということは,そんなにすごいことなのでしょうか。
人間という生物種の個体相互に共通性があることは明らかです。
共通性があることを前提としなければ,「人間という生物種」自体観念できません。
とはいえ,その共通性の範囲内において,個々の人間に相違があることも明らかです。
人それぞれ個の性質は異なります。
したがって,個の持つ特殊性は,あらゆる個が持つものであって,その意味では,特殊性の保有は一般的な事柄です。
誰もが個性を保持しており,その意味では皆同じ。
それ故,個性の保有が,他の個から優越する理由とはなりません。
個性の保有は,凡庸なことです。