「日誌撰集」
□「私的芸術論」
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4 説 得
説得とは,迎合により他者を操作する技術である。
誰が,言っているというわけではありません。
私が勝手に言っているだけです。
説得という方法は,考えてみると面白い。
説得は,他者に自分の考え方を共感してもらうことです。
他者の意向を無視しては,説得しようがない。
とはいえ,他者の意向に従うのであれば,そもそも説得の意味がありません。
説得をするにあたっては,その内容が相手方の共感を誘うものでなければなりません。
前提として,相手の価値観,世界観への尊重が含まれていなければなりません。
自分のやろうとしていることが,相手の価値観,世界観に合致していることを感得させることで,初めて説得というものが可能となります。
自分の意向を通す面,他人の意向に迎合する面,相反する双方がそろって初めて説得が成り立つのであり,そのいわば「ねじれた関係」に,私は,興味を持つのです。
説得とは,迎合により他者を操作する技術である。
というのは,その謂です。