「日誌撰集」
□「私的芸術論」
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カラヤンがやったことは超民主的な独裁。
誰も独裁されてると気がつかないんだけど,完全にやってる。
――岩城宏之
5 芸術と説得
芸術と説得とは似ています。
ところで,芸術とは,私的な事柄でしょうか,それとも,社会的な事柄でしょうか。
芸術は,個人の自我の表現です。
そうすると,それは,私的なものであるようにも思えます。
落語家の立川談志は,大変優れた芸術論の語り手です。
単に,私と感性が似ているだけかも知れませんが。
立川談志は,自我の解放が芸能であると言います。
このこと自体は,閲覧者の皆様にもよく響くものであるように思います。
ただ,他方で,談志は,個性というものに否定的な態度を採ります。
単なるしゃれとしてではなく,私には,この捻れが何となく分かります。
個性的であろうとすることは,容易なことです。
個性は誰にでもあるものだからです。
芸術作品は,自己表現です。
しかし,単なる自我の吐露ではありません。
単に,自分の思っていることそれをわめくだけであれば,それは誰にでもできることでしょう。