「日誌撰集」
□法曹関係小論集
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「ドイツにおける法律家の実情」
司法試験等法曹養成に関する制度が改正され、司法試験の合格者が増加したことで、司法修習生の就職難が生じていることが「問題」とされることがあります。
しかし、「本当に問題なのが?」という視点での議論は余りありません。
時々の経済状況に応じて、就職難に関する問題はあらゆる業種について生じるのです。
法律家ばかりを特別扱いする理由はどこにあるのでしょうか?
殊に、弁護士はプロフェッショナル(とされる)職業です。
社会で活動するに当たってはほかの職業よりも高いハードルがかせられなければならないのです。
派遣労働等非正規雇用の現場で苦労している人たちを保護しようという議論とは違うのです。
弁護士等法律家になろうとする人に高いハードルが課され、そのため敗者が生まれることは、能力のない人がプロフェッショナル然として活動することを防ぐための社会的な「生理現象」にすぎないのです。
そのことは、他の先進国での法律家の実情を見ればわかります。
中々文献がないのですが、ネットで学術論文の公開が進められていることもあり、信頼性の高い情報が入手できます。
まずは
ウ゛ォルフガング・ゼラート「ドイツ法曹養成の光と影」『上智法学論集』49巻1号(2005年8月)
リンクフリーかよくわからないので、「上智法学論集」で検索してみて下さい。
同論文によると、
190頁
第二次国家試験後に司法で活動するのは、法律家のほんの一部でしかな[191頁]い――15%は超えないはずである
とされます。
このような海外での実情を聞くと、「弁護士の就職問題」は本当に「問題」なのかと思うのです。
もっと露骨なのは
ペーター・ゴットウ゛ァルト「ドイツにおける弁護士の状況」『立命館法学』308号(2006年4月)
この論文では次のとおり。
2003年に認可された600人の若年弁護士のうち本業で生計を完全に賄える者
18%(161頁)
その他の収入に頼る者
51%(同頁)
このことからも、試験に受かりさえすれば、弁護士として安泰になるなどという発想が誤りであるとわかります。
因みに
2002年度の租税控除前の平均年収
個人開業のフルタイム弁護士
47000ユーロ
地方弁護士事務所のパートナー(共同経営者)
77000ユーロ
だそうです。(160頁)
因みに、今日13時時点
1ユーロ
=125.23円
です。