「勉強部屋」

□自由に関する学習帳
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ベルクソン『時間と自由』を読む・3



第2 後天的な事実に基づく自由の反証

 自由の反証となる事実として,ベルクソンは,[T]物理的な事実と[U]心理的な事実の二つが挙げられるという(171頁)。

[T]物理的な事実

「自由というものは物質の根本的諸特性,特に力の保存の原理と相容れない」という主張。(172頁)

[U]心理的な事実
 
「ある場合には,私たちの行動は感情,観念,以前の意識状態の全系列によって必然的に規定される」という主張(171頁)。

 ベルクソンは,(1)[T]の事実は,[U]の事実に帰着し,(2)どんな決定論も,たとえ物理的なものであっても,心理的な仮説を含んでいるという(172頁)。
 そして,心理的決定論(及びこの見解に対する反駁)は,「意識状態の多様性,とりわけ持続についての不正確な考え方に基づいている」という(172頁)。
 
 その上で,まず,物理的決定論について,検討する。

第3 物理的決定論
 
 ベルクソンは,「物理的決定論は,(略)物質についての力学的・動力学的理論と密接に結び付いている。」(172頁)と言います。
 それをもう少し具体的に言うと,「宇宙は(略)分子と原子に分解され」,「物理現象も化学作用も,」「これらの基本要素の運動に客観的に還元される」(173頁)ところ,「エネルギー保存の原理は曲げられないと考えられているので,神経組織のなかにも,その位置が他の原子から受ける機械的作用の総和によって決定されないような原子はおよそ存在しないということになる。もし或る一定の瞬間における」(173頁〜174頁)「宇宙のすべての原子の位置ならびに運動とを知っているような数学者がいたとしたら,彼はこの身体組織をもつひとの過去,現在,未来の行動を,あたかも天文現象を予見するように,絶対確実な精密さで計算すること」(174頁)が可能となります。
 ベルクソンの論述は,やや晦渋なのですが,この辺りの議論は,特別に「物理的決定論」に関する学術的な知識がなくてもついていけます。
 ベルクソンは,以上のような仮説の立場を前提としても
(1)「この仮説からは私たちの意識の諸状態が相互に絶対的に決定されているという結論は出てこないこと」(175頁)
(2)「エネルギー保存の原理のもつ普遍性といえども,何らかの心理的仮説によるのでなければ認められないこと」(175頁)
が認められると言います。
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