過去拍手

□今日という特別な日を、君と
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「お帰り、ウルキオラ!」


果たしてここは本当に自分の部屋なのか。


最低限の調度品しか揃えていないはずの室内は、今はきらびやかな装飾に彩られていた。

中央の円卓には旨そうな香りを漂わせる数々の料理と、大きなホールケーキが。


「誕生日おめでとう」

「……?」

「藍染様にね、ウルキオラが破面化した日を調べてもらったの。
それが今日。12月1日」


眉を潜めたウルキオラに彼女は謎解きをするように告げた。

そして「早く早く」と腕を引き、ウルキオラを席へと急き立てる。


「本当はいつでも良かったんだ。……ってこんなこと言ったら怒られるかもしれないけど」


まだ状況を呑み込めていない様子のウルキオラをそのままに、彼女はてきぱきと支度を進める。


「ただウルキオラにとって特別な日を、一緒にお祝いしたかったの」


眩しい笑顔を向けられて一瞬言葉を失った。

けれどすぐに元の憮然とした表情を取り繕って。


「――誕生日など」

「意味はない?」


ウルキオラの言葉を先取りして、彼女は笑った。


「でも、こうしてお祝いすることには意味があるよ」


そう言いながらウルキオラに持たせたグラスにシャンパンを注ぐ。

ゴールドの細かな泡がグラスの中でぱちぱちと弾けた。


「はい、じゃあウルキオラの誕生日を祝って。乾杯!」


キン、とグラスのぶつかり合う音が二人きりの室内に響く。

文句を言うのを諦めてシャンパンをあおると、喉の奥をピリリと通っていく感覚が心地よかった。


他者の干渉を極度に厭う彼であったが、不思議と今の気分は悪くない。

それは一体何故なのか。


「見てこのケーキ!美味しそうでしょ?
早く食べようよ。じゃないと私が全部食べちゃうよー?」


目の前で子供のようにはしゃいでいる彼女を見て、ウルキオラの思考はそこで中断された。


祝うことの意味?

それがあるとするならば、こいつがこうして嬉しそうに笑っているということだけだ。



「……主役は俺だろう?」


ふっと短く漏らされた吐息は、溜息か微笑か。

それはその表情を目の当たりにした彼女だけが知っている。



「苺は食うなよ」

「えー、けち」



やはり、誕生日に意味などない。それは何度考えても同じ。


ただ。


もしかしたら。


俺の存在には、僅かばかりの意味があるのかもしれない。



自分の為だけに満面の笑顔を溢す彼女を見つめながら、ウルキオラの頭にはそんな想いが過ぎっていた。








(ところでウルキオラっていくつになったんだろうね?)

(……知るか)


+++

Happy Birthday ウルキオラ!!
いつを誕生日と考えるかは諸説ありそうですが、とりあえずこの話の中ではってことで。
でもきっと人間のときも12月1日生まれだったんだよ!多分!
何年経っても大好きです。
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