過去拍手
□今日という特別な日を、君と
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「ウルキオラの誕生日っていつ?」
三月ほど前だったろうか。
何の含みもない眼差しで、あいつが唐突に問いかけてきたのは。
「誕生日?」
「うん」
「何だそれは」
「えっ!誕生日だってば。生まれた日!」
「だからそれがどういう意味かと訊いている」
ウルキオラの質問の意図を掴みかねているらしく、彼女はぱちぱちと目を瞬いた。
「俺たち破面は何を以て誕生日と定義する?
人間として生まれた日か?死んだ日か?それとも破面に生まれ変わった日か?」
「それは――」
「いずれにしろそんなくだらんことをいちいち覚えてはいない。知ったところで興味もない」
そう吐き捨てて瞼を伏せる。
視界が完全に鎖される間際、彼女が寂しそうに俯いている姿がやけにくっきりと残った。
「でも……誕生日くらい」
「……次の任務まで少し休む。もう帰れ」
瞼の裏の残像を掻き消すように固く目を閉じた。
程なくしておずおずと傍らの気配が遠ざかっていく。
くだらない。
誕生日を知ったところで何になる。
何を喜び、何を祝う。
俺は虚無を司る十刃だ。
俺が今ここに存在することさえ、何の意味もないというのに。
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