過去拍手

□Over and Over
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これまでに何度も戦地に赴くカカシの後姿を見送ってきたけれど


未だかつてこんな胸騒ぎを覚えたことはなかった。




……大丈夫。


彼は幾度となく死線をくぐり抜けてきた歴戦の忍だ。


絶対に帰ってくる。



そう信じてるのに。



何故だろう――さっきから手の震えが止まらない。




『カカシ……やっぱり行くの?』


『ああ。木ノ葉は誰にも潰させやしない』


『…………』



きつく唇を引き結んだ私の頭を撫でて笑った。



『必ず戻るよ』



普段約束事などしない彼が珍しく告げた一言は、まるで自分自身に言い聞かせるようで。


そうして彼がここを出てから数刻も経たないうちに、カカシのチャクラの波動が、消えた。




大丈夫。


チャクラ切れなんていつものこと。


今に頭を掻いて「いや〜、まいったヨ」なんて帰ってくるに違いない。


いつものことだもの。



頭は必死にそう言い聞かせるのに、心がうまく聞き入れてくれない。



怖い。


怖いよ、カカシ。



チャクラが消えてからどれだけ経ったと思ってるの。


どうして帰ってこないの。


必ず戻るって言ったじゃない。



ついには全身に広がった震えが、カタカタと暴れて止まらない。



嫌だよ。


奪わないで。


たった一人の大切な人なの。


カカシがいなくなったら、きっと私は私じゃいられなくなる。


どうか私からカカシを奪わないで。




「カカシ……」


喉の奥から渇いた音が洩れる。



お願い。


一人にしないで。


早く帰ってきて。



明かりも点けずにうずくまり、静まり返った部屋の中。



ガタン、と物音が響き渡った。







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