過去拍手

□奇跡が終わるとき
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『人は死んだら星になるんだよ』




「昔ね、こんな話を聞いたの。
死んだ人は星になって、いつも天から見守ってくれてるって。
だから寂しがることはないんだって。
――カカシはどう思う?」


「んー……いい話だとは思うけど、まァ子供騙しだよね。
そもそも死んだ人間がみんなそうなったら、星がいくつあっても足りないでしょーよ」


「……夢がないなぁ」


「いい歳して夢ばっか見ててもネ」



さらりと緩い笑みを返すカカシに、それはそうだけど、と唇を尖らせる。


現実論はともかくとして、少しくらいのってくれたっていいのに。


小さく肩を落として嘆息すると、隣で七夕の夜空を仰いでいたカカシがおもむろに呟いた。



「……でもま、織姫と彦星の例えには悪くないかもな」


「え?」


見上げたカカシの双眸は、いまだ遥か上空の星空に向けられたまま。



「一年に一度だけの逢瀬を許された二人が、七夕の夜に天の川を渡る。
そこには無限の星が広がっていて、そのひとつひとつが誰かの魂で。
何千何万もの星の渦に埋もれそうになりながら、それをかき分けて、自分だけの星を探しに行く――」


そこまで言うと、カカシは私に視線を戻してニッと目を細めた。



「ただ会えるだけじゃ面白みがないし、それぐらいの苦労はしてほしいよね」



カカシのその台詞に私は心底呆れた。


「面白みって……あのねぇ、二人はもう十分に苦労してるの!
ただでさえ一年に一度しか会えないのに、これ以上の試練を与えるなんて可哀想だよ」


「優しいねぇ」


「カカシが厳しすぎるんでしょ。
大体あの星の中からたったひとつを探すなんて、見つけられっこないじゃない」


「そう?俺は自信あるけど」



躊躇いもなく告げられた一言に思わず目を瞬いた。


そんな私に、カカシは余裕を滲ませた表情で笑いかける。



「もしもおまえがあの星の中のひとつになっても、俺はきっと見つけ出せるよ」








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