Dear…

□Smile inside of the Mask
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「…………で、おまえらは現世に何しに行ってやがったんだ?」



現世での任務から戻ったその翌日。


ピクピクと額に青筋を立たせている十番隊隊長に頭を下げながら、沙羅は隣で同じように丸くなっている乱菊をぎろりと睨んだ。



(……信じられない!よりによって報告書を忘れてくるなんて!)


(だってぇ……買い物に夢中で任務のことなんてすっかり頭から抜けてたんだもん)


(そんなの言い訳になりません!今回の調査結果が全部書いてある重要書類でしょ!?)


(大丈夫だって。どうせ一般人には見えないんだし、誰にも見つかりゃしないわよー)


小声でぼそぼそとやっているところにドン!と机を叩く音が響き、二人は揃って肩を震わせる。



「とっとと戻って取って来い!」


「ええー!また現世に行くんですかぁ」


唇を尖らせて、さも面倒そうな顔をする乱菊。


「もう買い物は十分したし、今さら行ってもねぇ……」


「……松本」



日番谷の眉間の皺が一層深くなるのを見てとって、沙羅は乱菊の横腹を思いっきりどついた。



冗談じゃない。ただでさえ気が短いこの十番隊長を、これ以上怒らせたらどうなるかわかったもんじゃない!


そんな重苦しい空気が流れる中、背後の隊首室の扉が慌ただしく叩かれた。




「失礼致します!日番谷隊長はおいでですか!」


「ああ……何だ」


すぐさま扉を開き膝をついた隊士は、緊迫した様子で告げる。


「たった今、虚退治の任についていた第四部隊から緊急の伝令が入りました。
目標である虚の魂葬には成功したものの、帰還途中で別の虚と遭遇。
大虚と見られることから救援を要請したいとのことです」


「あら、それは大変!
隊長、救援部隊の編成はあたしに任せて下さい。んじゃ失礼しまーす!」


「ええっ!?ちょっ、乱――」


呼び止めるよりも早く、乱菊は隊士を引き連れそそくさと隊首室から飛び出していった。




「……はぁ」


「………………」


ぽつん、と二人だけ取り残された隊首室に、日番谷の溜め息が響く。


恐る恐る顔を上げると、さも申し訳なさそうな表情の日番谷と目が合った。



「悪りぃな、沙羅……」


「………………」




――ああ、とんだとばっちりだ。



がっくりと肩を落とす沙羅であった。






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