Dear…
□Calling You
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夢を見た。
ここ最近何度も繰り返し見ているあの夢だ。
漆黒に包まれたその世界で、俺は誰かの名を呼んでいた。
無限に広がるその闇の中は
どんなに走り回っても一筋の光すら射すことはない。
どれだけ喉から声を絞り出そうとも
求める人の声が返ることはない。
どれだけ遠くへ手を伸ばそうと
その手はただ空を切るのみ。
何もかもが失われた……虚無の世界。
それでも。
俺は呼んでいた。
その人の名を、ただひたすらに。
その名を口にすることだけが、この絶望的なまでに孤独な空間で自我を保つ、只一つの手段だった。
愛する人の名を、呼ぶことだけが。
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