Dear…
□Mission
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一方その頃、虚圏に帰還したウルキオラもまた自宮の前でとある人物の出迎えを受けていた。
「よォ。遅かったじゃねぇか。
クソ真面目なてめえが帰還予定時刻を過ぎることもあるんだなぁ?」
そう言いながら近づいてきた水浅葱の髪の男は、ウルキオラの目の前まで来るとにやりと口の端を上げた。
「聞けば最近随分と現世に入り浸ってるらしいじゃねえか。
何か面白い獲物でも見つけたのかよ?」
「……何の用だ」
己とは正反対の位置に宮を持つこの男が、用も無しにこの辺りをうろつくとは思えない。
極めて無駄を省いて返事を返したウルキオラに、彼――グリムジョーはチッと舌を鳴らすと用件を告げた。
「藍染様がお呼びなんだよ。
……新しい任務だ」
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「お帰り、ウルキオラ。
帰って早々呼び立ててすまないね」
虚夜宮の玉座の間では、この城の王が椅子に肘をついたまま、相変わらずの冷たい微笑みをたたえて入室した彼らを眺め下ろしていた。
「……この身は藍染様とその御心の為に存在するもの。
お望みとあらばいついかなるときでも参ります」
淡々とそう告げると隣のグリムジョーは「けっ」と低く吐き捨てたものの、藍染は満足げに頷いた。
「ありがとう、心強いよ。
さてウルキオラ、早速で悪いが君を見込んで新たな任務を与えたい」
「はい」
「今回の任務はグリムジョーと組んで当たってもらう。
最近現世で我らのことを嗅ぎ回っている死神がいるようでね……
少々目障りなんだ」
ざわり、と。
胸が騒いだ。
「死神、ですか」
「ああ――悪い芽は早いうちに摘んでおくに越したことはないだろう?」
ふ、と笑みを零した主からは微塵の切迫性も感じられなかった。
恐らくはそこから生じる弊害など毛ほどもないのだろう。
ただ、目障り。それだけの理由で。
「最近君には現世での任務を多く与えていたから、他の者に比べて地理にも詳しいだろうと思ってね。
何、数も霊圧も大した規模じゃない。君とグリムジョーの二人で行けば十分だろう」
藍染は気づいているのだろうか。
揺れ惑う翡翠の瞳に。
無意識に握り締めた拳に。
否、気づかれてはならない。
破面が、十刃が、創造主である彼の意を遂げることに躊躇するなど、あってはならない。
「動きはすでに掴んである。
次に奴らが現世に下りるのは明日だ」
そこまで告げて、目の前の主は艶然と微笑んだ。
いつも通りの、穏やかな声音で。
「ウルキオラ――不運な死神どもを始末してきてくれ」
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