Dear…
□Don't Die Away
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「――沙羅!?」
穿界門をくぐり抜け瀞霊廷に戻った沙羅に真っ先に気づいたのはルキアだった。
恐らくは沙羅を案じて待っていたのであろう彼女は、その姿を見るなり血相を変えて駆け寄ってきた。
「ずぶ濡れではないか!だから早く帰って来いと言ったのに――!」
少しでも雨を払おうと手持ちのハンカチを持って手を伸ばしたルキアは、そこで動きを止める。
「沙羅……?」
頬を濡らしているのは雨ではなかった。
真っ赤に泣き腫らした瞼の下で、濃紫の瞳は未だ新しい雫を溢れさせていた。
「ごめん……ルキア。ごめん……」
そう言いながらもたれかかってくる沙羅をルキアはしっかりと受け止めた。
その身はカタカタと小刻みに震えていた。
こんなに弱りきった沙羅を見たことはない。
その様子はただ隊士たちの死を悼んで泣いているだけではないような気がした。
それでも「何があった」と問えば彼女はまた「何でもない」と笑うのだろうか。
そんな仮初めの笑顔を浮かべさせるのは嫌でただ背中をさすった。
すると次第に震えは大きくなり、沙羅は声を洩らして泣いた。
「ごめん……ごめんね……」
うわ言のように繰り返す沙羅をなだめて、濡れた体を拭いてやる。
だがハンカチ一枚ではそれにも限界があった。
「沙羅……このままでは風邪をひく。
隊舎へ戻ろう。この時間なら皆はもういないはずだ」
日はとうに暮れ辺りは薄闇に包まれていた。
任に就いていた隊士たちももう隊舎を出て帰宅している頃合いだろう。
涙の治まらない沙羅に言い聞かせるようにそう告げて、ルキアは冷え切った手を握り締めながら隊舎への道を進んだ。
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